J初の「カルチョ・スタイル」がFC東京を変える (2ページ目)

  • 藤原 夕●文 text by Fujiwara Yu
  • photo by Maurizio Borsari/AFLO

 フィッカデンティ監督は、フィジカルトレーニングと並行して、チーム始動直後から早々にチーム戦術のトレーニングにも着手した。特に時間を割いていたのは、ディフェンスだ。ポジショニングやカバーリング、ラインコントロールはもちろんのこと、選手の体の向きにいたるまで、相手を想定しながらのシミュレーションを繰り返して、丁寧かつ入念に指導していた。

 攻撃においても同様だった。ゴール前の仕掛けや突破においては、選手個々の創造性やアイデアを重視しながらも、GKがボールを保持した時点からどうやってボールを運び、どう攻撃を組み立てていくのかを事細かに指示。そのうえで、どこで攻撃のスイッチを入れるかというところまで徹底させて、自らの戦術を選手たちの意識下に落とし込んでいた。

 フィッカデンティ監督によると、それらは「約束事ではない」という。「(サッカーの)正しい概念を伝えるため」と説明する。つまり、勝つために必要なこと、こうやって守る、こうして点を取るという、まさに"カルチョ(イタリア語でサッカーの意)の基本"とも言えることをチーム内に植えつけていたわけだ。そこには、やや曖昧になっていた"本来やるべきこと"を、誰もが再認識し共有することで、勝負における詰めの甘さを解消しようという意図が感じられた。

 チームのベースを築く一方で、精力的に実戦もこなしている。香港遠征では国際親善大会の『AET CUP』に参加。欧州クラブと2試合を消化した。試合は、オルハネンセ(ポルトガル)に1-1(PK5-6)、クリリヤ・ソヴェトフ・サマーラ(ロシア)には0-1で敗れたが、ウインターブレイク中の両クラブと違って、FC東京はシーズン前。そうしたコンディションの差が、そのまま結果に表れたと言えるだろう。

 ゆえに、フィッカデンティ監督も結果にはこだわっていなかった。「今は選手の適性を見極めながら、いろいろなことにトライしている」と、多くの選手を起用し、システムも状況に応じて変化させていた。ただ、そんな中でも、今季の指針となりそうなフォーメンションが見えた。4-3-3布陣である。

 メンバー構成は、センターFWにエドゥーや平山相太を置き、両サイドの左が渡邉千真、右が河野広貴(石川直宏)。中盤は、インサイドハーフに米本拓司と東慶悟、アンカーに高橋秀人が配置された。そして最終ラインは、右から徳永悠平、マテウス(加賀健一)、森重真人、太田宏介らによる4バックとなる。フィッカデンティ監督は、「このシステムにこだわっているわけではない」と話すが、選手たちはこの布陣が基本スタイルになると捉えている。森重が言う。

「(4-3-3の布陣は)守備面だけでなく、サイドの崩し方や数的優位の作り方、2列目の飛び出しなど、攻撃面でも特徴がある。監督から、勝つための最善のシステムになりうると提示されているのだと思う」

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