鹿島の最重要課題。大迫勇也の穴はどうやって埋めるのか? (3ページ目)

  • 田中滋●取材・文 text by Tanaka Shigeru photo by Getty Images

 キャンプでのトニーニョ・セレーゾ監督は、例年より早い時期から戦術練習に着手。新加入の選手に約束事を叩き込むことに加え、サイドからのクロスに人数をかけてゴール前に入り込む形を徹底して練習した。昨季も同じような練習は行なっていたが、走り込むコースや身体の向きについても、より詳細に指示を出していた。「総得点を維持して守備を改善するプランは崩れた」と嘆いていたが、得点力の減少を防ぐために最大限の努力を行なっている。

 たしかに、2月9日に行なわれたアビスパ福岡とのプレシーズンマッチでは、サイドからの攻撃パターンが数多く見られ、DF伊東幸敏のクロスにダヴィが飛び込んだ得点シーンは、まさに練習通りのものだった。この日、3得点で攻撃を牽引したダヴィは、「残った選手で大迫の役割を埋めていかないといけない」と、エースストライカーの穴を埋める決意を示した。

 しかし現状を見ると、大迫の穴は埋まったとは言いがたい。穴を埋めるというのは、同じだけの実力者を用意して初めて言えること。今の状態は、将来性のある選手に未来を託しているだけだ。

 クラブとしては「ポスト大迫」を赤崎秀平に託し、彼自身もそれに応えるべく、高い意識でキャンプに臨んでいた。とはいえ、彼はルーキーのひとり。関東大学リーグで2度の得点王に輝いた実績があり、トニーニョ・セレーゾ監督も「決定力がある」と評価する通りの選手だとしても、「大学から来たばかりで、どれくらいできるのか分からない」というのが本音だろう。赤崎に負担をかけすぎてしまうのは危険だ。

 現在もクラブは、新たな外国人獲得のために手を尽くしているという。しかし、打診先のクラブからは渋い回答しか得られていないようだ。「夏まで待てば話もまとまりそう」とチーム関係者は語るが、いつまで時間が許されるのか……。いずれにせよ、後手を踏んでいる印象は否めない。

 昨シーズンが始まる際に興梠を失い、今シーズンは大迫を失った鹿島。トニーニョ・セレーゾ監督は、キャンプを終えてこう語った。

「サッカーというのは面白い世界で、一番困難な状況だろうと思う瞬間、逆に良い結果が出ることもある。プラス思考で行かないとね、人生は――」

 指揮官が思い描くように、苦しい立場から逆転することはあり得るのだろうか。ともあれ、鹿島アントラーズにとって厳しい1年がスタートする。

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