なでしこの原石が光り輝いた、高校女子サッカー選手権大会 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 日ノ本学園を率いて今年で2年目の田邊友恵監督。初年度はもともとのチームカラーを消さないように選手たちの良さを引き出すことに集中した。選手が入れ替わり、新チームとなったとき、入江を始め、中盤にトリッキーな選手が多いことから、田邊監督がイメージしたのは誰をも魅了するFCバルセロナのパスサッカーだった。選手たちもすぐにパスサッカーの魅力に引き込まれていき、そこからはひたすら素早い判断と、複数の選択肢を手に入れるための連動を伝え続ける日々。「ようやくここまで来た。だから守備はほとんど練習していないんですよ(苦笑)」と話す田邊監督。

 しかし、愛弟子達はしっかりと分析をして、つなぐサッカーをするために最適な守備をイメージしている。その中心となっているのがセンターバックの羽座妃粋(はざ ひすい/3年)だ。準決勝では神村学園の攻撃をシャットアウト。中盤にプレスを効かせながら、ここぞというところでは自らが体を寄せて確実にボールを奪う冷静なプレイを見せ続けた。

「攻め込まれても失点ゼロに抑えられていることは大きい」(羽座)としていた守備陣は、決勝で1失点するも、最後まで大きく崩れることはなかった。そんな守備に支えられているからこそ、日ノ本学園のポゼッションサッカーは成り立つのだ。

 決勝はともに似たスタイルのサッカーを身上にするチーム同士の対決とあって、中盤は激しいせめぎ合いになった。

 日ノ本は攻撃軸の入江が徹底マークに合い、藤枝順心の杉田はボールを持つと瞬時に囲まれる。互いの10番を押さえ込みながらもポゼッションを展開していく決勝は4-1というスコアのような差は一切なく、見応えがあるものだった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る