「相性のよさ」を発揮。中村俊輔が予見していた横浜FMの天皇杯制覇 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Fujita Masato,Taguchi Yukihito

 そう語る中町は、「広島にはリーグ戦で2勝。広島と同じスタイルの浦和にも負けてない(2勝)。自分たちの力をここで証明したかった」という。

 そんな彼らの強い気持ちは、ピッチ上にもしっかりと表れていた。敵将、森保一監督は脱帽の体で語る。

「(試合の)入りのところがすべて。前半15分から20分までのところで横浜のほうがアグレッシブだった。そこで失点して難しい試合になった。今日の横浜はすばらしかった。優勝に値するプレイをしていたと思う」

 試合序盤から主導権を握った横浜FMは、17分にMF齋藤学が、21分にDF中澤佑二が立て続けにゴールを決めて2点のリードを奪うと、悠々と逃げ切った。「選手には『今季のベストゲームをやろう』と話して臨んだが、集中していい試合をしてくれた」とは、樋口靖洋・横浜FM監督の弁。指揮官の言葉どおり、まさに完勝と言っていい試合だった。

 J1の1、2位クラブの対戦という頂上決戦となった今季の天皇杯決勝は、果たして、2位の横浜FMが優勝した広島に借りを返したことになる。

 とはいえ、中町も語っていたように、今季リーグ戦での直接対決は、横浜FMが広島に2戦2勝。つまりリベンジというよりは、「順当勝ち」とでも言うべき結果なのである。

 思えば、J1最終節(2013年12月7日)で川崎に敗れ、優勝を逃した直後、キャプテンの中村俊輔はこんなことを話していた。

「こういうときに全部ネガティブに捉えるのもどうか。2位で終われたわけだし、上位陣には勝っている。これだけ混戦になると、『相性』もあるから」

 中村が語っていたように、今季の横浜FMは、シーズンを通じて優勝を争った広島や浦和には全勝している一方で、新潟には2戦2敗。その他、甲府、仙台(ともに2分け)、鹿島、柏(ともに1分け1敗)からも勝利を挙げられていない。中村が「どこか勝負弱いところが、何試合かであった」と振り返る要因である。

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