検証。Jリーグ20年を経て生まれた3つのトレンドとは?

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 そうした強烈な外国人選手がいないので、それはそれで物足りなく思わないでもないが、チームの中で点を取るエースストライカーの役割を安心して任せることができる日本人FWが出てきていることも事実。だからこそ、得点を決める以外の役割を担う外国人選手を獲得するクラブが多くなってきていると言える。

 今季の得点王争いでひとつ評価に値することは、上位が高いレベルで競っていたこと。トップの大久保の26点以下、20得点以上の選手が4人いる。各チームの守備が弱かったのかというと、急に弱くなったとは思えない。そのうえで、日本人が上位を占めたということは素晴らしい。

 シーズンを通して、「自分がゴールを決めなければチームは勝つことができない」というポジションに据えられることは、相当な重圧がある。そのプレッシャーの中でどれだけ成績を残せるかが、エースストライカーとしてやっていく上で重要だ。優勝争いのプレッシャーを感じながら、責任を背負いながら経験値を積み重ねる。そういうポジションは今まで外国人FWが担っていることが多かった。

 それが、何度も言うようだが、20年間、育成に力を入れてきた結果として、大迫や柿谷、あるいは川又堅碁(新潟)のような20代前半のたくましいFWが出てきた。しかも、柿谷も大迫も、日本代表に入って結果を出せる選手に成長している。

 また、最近は移籍がスムーズにできるようになったこともあり、出場機会を得るために一度移籍して、また戻ってくるケースが増えている。それが柿谷のように、選手の成長につながっている。

 セレッソ大阪に入団してから伸び悩んでいた柿谷は、2009年に当時J2の徳島に移籍して、そこで実績を積んでから2012年にセレッソに戻り、今、J1の舞台で活躍を続けている。

 育成がうまくいかないとき、同じクラブの中でどうにか改善しようというのが今までのやり方だったが、プロリーグの仕組みの中では、下部カテゴリーのクラブで経験を積むという方法もある。柿谷は徳島で多くのことを吸収してセレッソに戻り、力を発揮するようになった。そういう意味で柿谷は、20年が経過したJリーグが育てた選手ともいえる。川又にしても、新潟からJ2の岡山に移籍し、今年新潟に戻ってブレイクした。これは、選手をリーグ全体で育てるということだと思う。

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