元横浜FM監督・木村和司「俊輔には優勝させてあげたかった」 (2ページ目)

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 なかでも、際立っていたのは、中村俊輔だ。コンディションが良かったのもあるけど、彼が自身のプレイで高い意識を示して、チームを引っ張っていたよな。攻撃では、まさに俊輔が中心だった。組み立ての際は、ボールがほとんど俊輔を経由して、決定機のほとんどが俊輔のパスから生まれていた。

 もちろん、周囲のサポートも大きかった。とりわけ、ボランチの中町公祐と富澤清太郎がいい働きを見せていたな。彼らが最終ラインと前線とのつなぎ役を果たすことで、俊輔が下がってボールを受けることが減った。その分、体力的な消耗も少なく、俊輔はフィニッシュでも力を発揮できるようになった。だから、得点数も増えたんだと思う。

 さらに、前線の齋藤学、マルキーニョスの存在も大きかった。あそこでボールが収まるから、俊輔が前を向いてプレイすることができた。おかげで、簡単にボールをはたくところはたいて、仕掛けるところは仕掛けていく、といったメリハリのある攻撃が実践できていたよな。

 また、俊輔の活躍で忘れてはならないのが、守備。彼がスライディングして、体を投げ出して守備をするシーンを何度見たことか。ときには、自陣ゴール前まで帰ってきて、ディフェンスすることもあった。そんな俊輔の奮闘ぶりを見たら、他の選手もやらないわけにはいかんやろ。

 そういう意味では、俊輔のそうした姿を見て、刺激を受ける若手選手がなぜ出てこなかったのか。本来、レギュラーを脅かすような、活きのいい選手がもっと出てきてもよかった。ひとりでも、ふたりでも、そういう選手が出てきていれば、違った結果になっていたかもしれない。

 ともあれ、今季の俊輔は本当に素晴らしかった。間違いなくMVPだと思うよ。俊輔自身、F・マリノスで初めての優勝をしたかったと思う。その気持ちは相当強かったはず。それだけに、勝たせてあげたかったな。最終戦のあと、ピッチに倒れ込むほどにがんばってきたんだからな。35歳やで。ほんと、優勝させてあげたかった。

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