2013年Jリーグ、名波浩が選んだ「ベスト11」

  • text by Sportiva
  • photo by Sueishi Naoyoshi,Sano MIKI,Yamazoe Toshio

横浜F・マリノスの飛躍は中村俊輔の存在なくして語れない。横浜F・マリノスの飛躍は中村俊輔の存在なくして語れない。MF
中村俊輔(横浜F・マリノス)
中村憲剛(川崎フロンターレ)
レオ・シルバ(アルビレックス新潟)
青山敏弘(サンフレッチェ広島)

 中村俊輔は、今季のJリーグの"顔"だった。ふた桁得点を記録したこともすごかったが、昨季と明らかに違ったのは、ボールにかかわる回数。ボールタッチ数(2013年=2550回、2012年=2091回)、パス数(2013年=2078本、2012年=1701本)とも急増し、F・マリノスの攻撃の中心として奮闘した。さらに際立っていたのは、被ファール数の多さ(リーグ1位=118回。2位は川崎F・大久保嘉人と広島の石原直樹=82回)。それがそのままセットプレイのチャンスにつながった。また、攻撃から守備への動きもチームで1、2を争うほど速かった。そんな俊輔の動きに周囲の選手も感化されて、チームの攻守の切り替えが速くなった。

 中村憲剛は、腰痛などの影響もあって、全試合出場はならなかったものの、試合に出れば常に高い存在感を示した。アタッキングサードへのパス成功数はリーグ1位(611本。2位は横浜FMの中村俊輔=563本)。チームの決定機を演出する仕事を最も多くこなした。大久保嘉人、レナトといった前線の選手をうまくサポートし、彼らの良さを最大限に引き出していた。味方選手に相手DFと競走させるような無謀な配球はせず、非常に理に適ったパスを出す憲剛。相変わらずフロンターレの中心選手だな、というのを見せつけてくれた。

 レオ・シルバは、本当にいい選手。何よりボールアプローチのセンスが抜群だ。相手ボールに対して、自分が奪える、奪えない、もしくは周りの味方選手が奪える、奪えない、というジャッジが非常に優れている。ゆえに、味方と横にスライドしながら対応するときでも、前後でタテ関係を築いたときでも、周囲とスムーズな連係を見せて相手ボールを奪取することができる。フィジカル能力も高くて、危ないところには必ず顔を出している。アルビレックスというクラブは、このポジションに人材が欲しいというとき、そうした現場の要求に応えるのが早く、なおかついい選手を獲ってくるチームだなと、レオ・シルバの活躍を見て改めて思った。

 青山敏弘は、サンフレッチェの特徴的な戦い方の中で、今季も攻守の舵取り役として素晴らしい活躍を見せた。サンフレッチェは、他のクラブよりも下がった位置からポゼッションし始めるのだが、それを無理なくこなせるようにしているのが、彼。青山が効果的にボールを出し入れして、他のチームと同じようなレベルで攻撃できるように、距離を埋めたり、時間を作ったりしている。そのうえで、前線の選手に目配せして、彼らに流動性をもたせながらボールを配球することができる。日本の選手でそれができるのは、他には遠藤保仁と中村憲剛くらい。

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