四国初のJ1クラブ・徳島が、来季波乱を巻き起こす?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Getty Images

「徳島らしい粘り強いサッカーで勝てた。この1年を象徴するような試合だった」

 チームキャプテンのMF斉藤大介がそう語っていたが、まさに粘ってつかんだJ1昇格だった。

 今季の徳島はシーズン前半、思うように勝ち点を重ねられず、8勝2分け11敗と黒星が先行。一時は15位にまで沈んだ。

 だが、後半戦のスタートとなる第22節のコンサドーレ札幌戦で、小林監督は3-4-3から4-4-2へとシステム変更を決断。これが奏功して1-0で勝利すると、一気に6連勝。その後も引き分けを含めて12試合連続無敗を続け、波に乗った。

 経験豊富な指揮官でさえ、「これほどチームが"異常に"変化するのはあまりない」と語るほどに、徳島は生まれ変わった。キャプテンの斉藤もまた、「4-4-2になってから、粘り強いサッカーができるようになった。夏場の連勝が大きかったし、自信にもなった」と振り返る。

 果たして徳島は、後半戦の勢いそのままにプレイオフを制し、悲願のJ1昇格をつかんだのである。斉藤が語る。

「こういう大きな舞台で結果を出すのは難しいが、みんなが同じ思いで戦った結果。四国初のJ1をうれしく思う」

 これで徳島は来季、戦いの舞台をJ1に移すことになった。率直に言って、厳しい戦いになることは間違いない。小林監督も「J1はスキのないチームばかり。少しでもチャンレンジできるように準備していきたい」と手綱を締める。

 とはいえ、徳島が未知の領域に踏み出すにあたり頼りになるのが、その小林監督の存在である。

 この53歳の指揮官は大分トリニータを皮切りに、セレッソ大阪、モンテディオ山形とJクラブで監督を歴任。豊富な指導歴を持つだけでなく、率いたクラブをJ2からJ1に昇格させるのは02年の大分、08年の山形に続き、今季の徳島が3クラブ目という「昇格請負人」なのである。

 加えて05年には、シーズン前にはほとんど"無印"だったC大阪をJ1優勝争いの主役にまで押し上げた経験を持つ。最終節を首位で迎え、勝てば優勝のFC東京戦。1点リードのロスタイムに同点ゴールを浴び、あとわずか数分というところでJ1制覇という快挙こそ逃したものの、伏兵を率いてサプライズを起こすことには実績があるのだ。

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