レッズ、ガンバサポからジュビロサポに送る「J2の心得」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 サポーターには、他にもJ2ならではの大変さがある。地方に本拠を構えるクラブが多く、応援に行くための移動時間、費用がかさむのだ。新井さんは「ACL(アジアチャンピオンズリーグ)で行った中国やシリアに比べれば楽ですよ」と言うが、それは一部の筋金入りファンの意見だろう。

 富山さん(女性・25歳)は、「J2には交通の便がよくないスタジアムも多く、見に行きづらくなりました」と不満をこぼす。さらに「J1のときは、『ヤットがあの選手と戦っているところを見たい』と思って足を運んだけど、J2だと相手チームのカラーもわからないし、選手も知らないから、『見たい』と思えない試合もあった」と続けた。

 ただ、ガンバサポーターの多くは、J2での戦いを前向きに捉えていた。前述の前田さんは、「いろんな町に行けるし、J2も意外と面白かったですよ。チームやサポーターも結束するし、J2を経験するのも悪くないんとちゃいますか」と話している。また、桐山さん(男性・41歳)は、「ベテラン選手が多く、チームは選手を入れ替えなければいけない時期でした。長谷川健太監督に代わって、若手を使えたのはよかったです」と語った。が、ふたりが口をそろえたのは、「結果的に1年で戻れたから、よかった」という前提だ。すぐにJ1復帰を果たせるか否かで、その後のクラブの命運、サポーターの苦しみも、天と地ほどに変わってしまう――。

 11月17日、東京ヴェルディ対徳島ヴォルティス(J2・第41節)の行なわれた味の素スタジアムには閑古鳥が泣いていた。ヴェルディにとっては、今季のホーム最終戦だ。にもかかわらず、およそ5万人を収容できる競技場に訪れたのは、わずか4777人だった。空席が目立ち、かつての栄光の面影は微塵も感じられなかった。

「昔は昔、今は今。“名門”とか、そういうことは関係ないです。新しいクラブを、ゼロから作っているような感じ」

 そう話すのは、子どもの頃、華やかなヴェルディに心を奪われた加納さん(男性・28歳)だ。続けて、J1復帰をすぐに果たせなかったときの深刻さを訴える。

「観客動員も苦労するし、スポンサーを集めるのも大変。グラウンドに目を向けても、J2のチームは守備を固めてくるから簡単には崩せないんですよ。J2に長くいると、そうやって雪だるま式に問題が膨れ上がっていく」

 挙句、若い才能を育てても、他チームへと流出するはめになる。多くのサポーターの声を代弁するように、村上さん(男性・25歳)が語る。

「うちはユースからはいい選手が出てくるけど、すぐに移籍してしまうんですよ。本当は長い年数をかけて、チームを作っていきたいところなんですけどね。結局、長くJ2にいればいるほど、サッカーファンから忘れられていきます。注目度が段々低くなり、チームが低迷しても、文句を言う人自体がいなくなる。今や、若い人はヴェルディのことをよく知らない。それじゃあ、選手も張り合いがないですよね……」

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