快進撃のあとは1勝15敗。大宮ファンは今、何を想う... (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 前述の町山さんも、大宮の心地よさを口にする。

「練習場でも選手との距離感が近いし、選手もサポーターも優しい。今年は新しいファンが増えて、チケットが売り切れた試合もあります。ファンが増えるのはうれしいんですけど……」

 歯切れが悪いが、なぜだろうか。

「今年はブーイングが増えたんです。今はサポーターの考えもさまざまで、『ブーイングしろ』という人たちと、『応援しよう』というグループに分かれてしまいました。チームが勝てないし、選手のメンタルも気になりますよ。こんなときだからこそ、サポーターが一致団結しないといけないんだけど……」

 泥沼から抜け出せないまま迎えた、11月10日(第31節)のヴァンフォーレ甲府戦。ホームのNACK5スタジアム大宮のゴール裏に、印象的な横断幕が掲げられていた。

「悔いなく闘ってくれ」

 この言葉こそ、現在のサポーターたちの心境をまさに代弁している。10代のころは大宮主催のスクールに通い、J2在籍時から応援し続けている吉田さん(男性/23歳)が言う。

「とにかく、すべての面で前に行く姿勢を見せてほしい。攻撃にしてもそうだし、監督交代劇を見ていても、『どうなっちゃうの?』という感じじゃないですか。去年までのように、負けていてもワクワクできるようなサッカーが見たい。負けても光が見えて、『またスタジアムに来よう』と思えるチームに戻ってほしい。今季の後半は、そうは思えない」

 厳しい言葉は、チームを思うからこそだろう。吉田さんが続ける。

「ここ2、3年で選手が集まってきて、ユース出身者も出てきて、アルディージャは今後も良くなると思えます。シーズン後半に負け続けているのは、まだクラブの力が足りないから。今の状況に悲観はしてないですよ。今年はいろいろあって、今までより楽しいシーズンでした。それだけに、残り試合を来季につなげてほしい」

 シーズン前半はリーグ優勝の夢を抱き、夏場には不可解な監督解任に歯がゆさをかみ殺した。大宮サポーターにとって、J1で9年目の今季はあまりにも激動のシーズンだった。

 しかし、酸いも甘いも味わった2013年も、残り3試合――。勝とうが、負けようが、すでにJ1残留を決めている。だからこそ、ただの消化試合にしないでほしいとサポーターたちは願っている。

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