なぜザックジャパンのサイド攻撃は減ったのか? (3ページ目)

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 そこで、香川が中央に入った分、左サイドにできたスペースに長友が上がっていくと、サイドにも三角形ができてパスコースが増える。その左サイドからの攻撃が、日本代表のストロングポイントであり、W杯予選では何度もそこから崩してゴールが生まれた。

 しかし、ここ数試合は長友が攻撃に参加する回数がやや減ってしまった。もちろん格上相手の場合、相手に押しこまれる時間が長いと守備に忙殺されて、なかなか前に出ていけないということもあるだろう。それがサイド攻撃が減ってしまう原因のひとつといえる。

 また、強豪からゴールを奪うためには、ボランチのふたりも前線に絡んでいく動きが必要になり、ここ数試合はボランチが上がる回数が増えた。9月のグアテマラ戦やガーナ戦で、遠藤保仁がラストパスを出すだけではなく、シュートを打つシーンが増えた。あれは高い位置まで行っているからこその結果だ。

 ただし、ボランチが出ていくと、そこのケアをしなくてはいけないので、今度はSBが前に出ていきづらくなる。そのことも、SBが攻撃参加する回数が減ってしまった原因のひとつといえる。

 長友の攻撃参加と左サイドからの崩しがあったW杯アジア予選の時は、遠藤、長谷部誠の両ボランチが前に出ていくシーンはそれほどなく、SBを前に出すためにSBが上がったスペースのケアをしていた。そうしたボランチの動きがないと、長友や内田は安心して高い位置を取れないということでもある。

 ボランチの攻撃参加は、それとして必要なことなので継続してほしいが、同時に、ボランチがリスクマネジメントをした上でのSBの攻撃参加をどれだけ引き出せるか。長友と内田が上がっていけるように、ボランチがSBを押し出すような動きがもっとほしい。それがなくては攻撃の幅ができないからだ。

 ただし、ボランチもSBも同時に上がっていくと、守備のケアをする選手がいなくなる。リスクをかけてボランチもSBも攻撃参加するという選択肢もあるが、8月のウルグアイ戦のようにカウンターをくらってやられてしまう危険性も増す。そこのバランスをうまくとらなくてはいけない。

 中央からの攻撃はもちろん重要だが、中央一辺倒では強豪国の守備を混乱させることも崩すこともできない。中央に相手DFが集結したときは、サイドにできたスペースを有効に使い、そして、サイドを使うことで相手の守備ブロックを広げて中央も使う。16日のオランダ戦、19日のベルギー戦では、そういったいいリズム、いいバランスの攻撃に期待したい。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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