なぜザックジャパンのサイド攻撃は減ったのか? (2ページ目)

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 たしかに、サイドに行くとゴールマウスに対して角度がなくなり、シュートコースは狭まる。逆に中央から攻めれば角度が広くなりシュートコースは増える。ただし、サイドに振られた時、DFはボールウォッチャーになり、その瞬間、マークのズレが生じてギャップができやすい。つまり、攻撃側にフリーの選手が生まれて、チャンスが広がるという利点がある。

 また、ペナルティエリアのゴールラインあたりまでサイドをえぐられることも危険なため、DFは中央からサイドに出て対応せざるをえなくなり、サイドに引っ張りだされる。その結果、守備ブロックを広げることになり、中央にスペースができる。

 つまり、サイド攻撃も中央突破も両方必要で、その「バランス」が重要。中央から崩す攻撃手段は当然持っておくべきだが、中央突破を生かすためには、もっとサイドからの攻撃を意識しないと、崩しきれないということだ。基本的なことだが、ピッチの横幅の68mを使うことと、相手陣地のゴールライン付近まで侵入して「深さをつくる」ことは、攻撃において非常に重要になる。それが、ここ数試合の日本代表はうまくできていない印象だ。

 中央に行くと相手に思わせてサイドに行く、サイドと思わせておいて中央に行く。相手DFに「サイドか?中央か?」という迷いを生じさせて、全員が連動してバランス良く攻める。今の日本代表は、中央、中央に偏っているので、そのあたりのコントロールと判断をもう少し改善できるはずだ。

 攻撃する選手が狙う方向を「矢印」を出すという表現をするが、この矢印の方向のとおりに正直に攻めていくと、それを察知して準備ができている相手DFにとっては怖くない。メッシのドリブル突破のように、「わかっていても止められない」レベルなら矢印どおりでもいいかもしれないが、日本にメッシはいないのだから、中央を見せておいてサイド、サイド見せておいて中央という駆け引きをして、相手の裏をかくことを意識してほしい。

 サイド攻撃も、サイドのタッチラインやコーナーキックのマークからクロスを入れても、日本は高さがないため相手にとって脅威になりづらい。これはスペイン代表やバルセロナにもあてはまるが、高さがないチームがタッチライン付近から長いクロスを入れるのはナンセンスで、そこから放り込んでも欧州や南米の屈強なCBにほとんどクリアされてしまう。敵陣のもっと深いところ、ペナルティエリアに侵入してから速くて正確なクロスを入れて初めて、サイド攻撃として成立する。

 また、サイドから揺さぶりをかけ、サイド攻撃を有効に使うためには、サイドバック(SB)が攻撃に絡んでこないとコンビネーションが生まれないので、SBがより高い位置をとらなくてはいけない。

 現在のザックジャパンは「4-2-3-1」のフォーメーションだが、前線の4人だけで強豪国のDFを崩しきることはかなり難しい。両サイドの香川真司と岡崎慎司、中央の本田圭佑と柿谷曜一朗の4人の場合、たとえば、左の香川が中央に入ってきて、本田、柿谷とトライアングル(三角形)をつくった時にいいコンビネーションが生まれやすいが、それだけで崩しきることはなかなかできるものではない。

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