F・マリノス、悲願達成へ。齋藤学が誓う「10年前の再現」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 しかし今シーズンの齋藤は、決して順風だったわけでない。

 3月の開幕前に左ひざを痛め、その後は左かかと、左臀部、さらに4月には腹部周囲筋挫傷で戦列を離れている。11節まで、先発出場はたった3試合しかなかったが、体のバランスを矯正して復帰すると、鋭い突破や唸るようなパスで攻撃を牽引するようになった。7月の大宮アルディージャ戦(第16節)、レッズ戦(第17節)と上位を争うチームとの連戦で連続得点を記録して連勝に貢献。その活躍が認められてアルベルト・ザッケローニ監督の招集を受け、同月の東アジアカップで日本代表デビューを飾っている。

 10月の欧州遠征、齋藤は出場機会に恵まれなかったが、帰国直後のJリーグ天王山、サンフレッチェ広島戦(第29節)では決勝弾となるドリブルシュートを叩き込んだ。重圧のかかる試合で結果を残せたことは大器の証明か。

「シュートがあるからドリブルが生きるし、ドリブルがあるからこそシュートも生きるんだと思います。(2011年シーズンに)愛媛FC(J2)でプレイしていたときよりは、随分と良くなっているという実感はありますね。もちろん、まだまだ足りない部分はたくさんあるんですけど」

 齋藤は謙虚さを崩さずに言うが、「自分の得点でチームを勝たせたい」とも言ってのける彼は、口調とは裏腹に貪欲で、野心的だ。10年前、慌てて優勝台を用意していたボールボーイが、今度は多くの人々に煌(きら)めく夢を見せようとしている。

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