ナビスコ杯決勝、柏と浦和の間にあった「差」とは何だったのか?

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 柏は大谷に加え、DF橋本和も出場停止。橋本に代わって先発が予想された山中亮輔がコンディション不良を訴え、DFの鈴木大輔、キム・チャンスまでもが負傷のため、この日の決勝に出られなかった。

 ベストメンバーで臨んだ浦和とは対照的に、レギュラーを4人欠き、負傷明けのレアンドロ・ドミンゲスは8月21日のACL準々決勝、アル・シャバブ戦以来の公式戦であり、ぶっつけ本番の状態だった。

 それでも、ゲームプランが共有され、局面での一対一に負けず、劣勢をひっくり返して勝利をもぎ取った。それはネルシーニョ監督が就任以来、口にしてきた「ヴィトーリア(ポルトガル語で勝利の意味)」の精神がチームに根付いていることの証しだろう。

 その柏にしても、この日を迎えるまで歩みが順調だったわけではない。優勝を目指したACLでは準決勝で中国の広州恒大に大敗し、心身ともに大きなダメージを負った。

「でも……」と、3バックを束ねた近藤直也が言う。

「ナビスコに残っていたおかげでモチベーションを切らさず、緊張感を保って切り替えられた部分がある。この大会にACLの悔しさをぶつけようと」

 その言葉は、そのまま、今の浦和にも当てはまる。

 浦和には、モチベーションを切らさず、緊張感を保てる機会が存在する。この悔しさを晴らす大きなチャンスが目の前にある。

 リーグ優勝――。

 浦和が06年以来の戴冠を果たしたとき、この準優勝の価値が高まるはずだ。

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