ナビスコ杯決勝、柏と浦和の間にあった「差」とは何だったのか? (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「狙いはファーサイドだった」と明かしたのは、好クロスでFW工藤壮人のゴールをアシストした藤田優人だ。

「偵察の方から、浦和はファーサイドが空くという情報があった。だからあれは、僕の狙いと工藤のイメージがシンクロして生まれたゴールです」

 ワンチャンスをものにした柏は、リードされて一層前がかりになって反撃してくる浦和に対し、プランどおり、マンマークを徹底させ、カウンターの色を強めるだけでよかった。出場停止の大谷秀和に代わってキャプテンマークを巻いたボランチの栗澤僚一が振り返る。

「後ろも安定して跳ね返していましたし、安心感はありましたね。このまま行けるな、終わらせられるなと思いながら、プレイしていました」

 ほぼパーフェクトに近い出来だった柏の守備において、唯一『綻び』となる可能性があったとすれば、それはレアンドロ・ドミンゲスとジョルジ・ワグネルが縦に並んだ左サイドだっただろう。

 ジョルジ・ワグネルは浦和のサイドからのクロスへの守備対応を怠らず、懸命に跳ね返してピンチを救った。レアンドロ・ドミンゲスも普段より低い位置まで戻って、ディフェンス陣を助けた。

 それでも、ピッチに立っていた柏の選手の中で、普段の守備力が11番目の選手がジョルジ・ワグネルで、10番目の選手がレアンドロ・ドミンゲスなのは確かだろう。

 もし、このサイドを浦和に徹底的に狙われていたら、完璧に近かった柏のバランスと選手間の距離は、果たして最後まで保たれただろうか。

 その点で、浦和にとって痛恨だったのは、攻撃が左サイド(柏の右サイド)に偏ってしまったことだ。

 浦和の攻撃における強みが原口、宇賀神友弥、槙野智章の左サイドにあるのは間違いない。だが、あまりに左サイドに執着しすぎて単調になってしまった。柏木が言う。

「チームが悪いときは左サイドに偏ってしまいがちだけど、今日もそうだった。うちは右利きの選手ばかりだから、どうしても左に展開してしまう。後半は自分が下がってボールに触って、いろんなところに散らそうと思ったけど......」

 柏は相手のウイークポイントを突き、浦和は突けなかった。

 その違いは『スカウティング力の差』でも、『美学の違い』でもなく、『勝負どころを見極められるかどうかの差』、『プレッシャーの掛かる大舞台でも普段どおりの力を出せるかどうかの差』と言えるのではないか。栗澤が再び言う。

「一発勝負の大舞台をどれだけ経験してきたか。うちのほうが、ここ数年に限れば経験値が上だという自信がありました。試合の中では『ここは勝負しなければならない』とか『ここは踏ん張りどころだ』という場面が必ずある。リーグ優勝や天皇杯優勝、ACLを経験してきたことで、一人ひとりがそれを感じられるようになったと思いますね」

 チームとしての経験値が高まっているのは、この日のメンバーからもよく分かる。

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