W杯本大会へ向けて、ザックジャパンは方針転換するべきか? (3ページ目)

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 強豪に勝つために、試合の流れを読み、コントロールしてゲームを進める力も重要だろう。どんな試合でも、全員が「勝つために今どうすべきか」を考えていないと、試合の流れはつくれない。「とりあえずやれることをやろう」だけでは足りない。90分の試合の流れをつくりだすことが重要で、20年前に比べればはるかにそのレベルは上がっていると思う。

 また、11月に対戦する格上のオランダレベルの国に、攻撃をどう仕掛けるかという部分については、ドルトムントの戦い方がひとつのヒントではないかと考えている。

 世界のトップではないドルトムントというクラブが、レアル・マドリードなどのビッグクラブに勝つために何をしているのか。「ハードワーク」と、「組織的な守備」と、「縦に速い攻撃」だ。これは、オシムさんが日本代表監督時代に目指していたサッカーにも共通点がいくつかあった。運動量が抜群に多く、縦へのランニングも多い。それを90分間やり続け、規律をしっかりと守り通すメンタリティ。そういうもので上回っていかないと、日本は世界の強豪とは戦っていけないと私は思う。

 ザッケローニ監督も、縦に速いサッカーを狙っているのだと思う。ボールを奪ったらすばやく相手の守備ラインの裏を1本のパスで突いていくサッカー。こうした縦にスピーディーに展開していくサッカーがこれからのトレンドになっていくだろうし、ドイツ代表のように選手の体のサイズも大きくなっていくだろう。全員がハードワークをする縦に速いサッカーが、これからの主流になっていくはずだ。

 9月のグアテマラ戦とガーナ戦で、ボランチのふたり、とくに遠藤保仁が前線に飛び出すシーンが増え、得点も決めた。今までだったらパスを選択していたところで、シュートを狙うシーンもあり、強豪からゴールを奪うために、ボランチは守って後方でパスをさばくだけでは駄目だということを意識していることが見てとれた。それは、方針転換とまでは言わないが、ひとつの変化だった。チーム全体にもそういう「縦への積極性」が出てきているので、それが強豪相手にどのぐらいできるのか、さらに注目したい。

 ベスト8、ベスト4をワールドカップで目指すのであれば、逆算して何をすべきか。世界のトレンドも踏まえたうえで、ザッケローニ監督が志向するサッカーを信じて続けていってほしい。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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