J1優勝へ。「王者の遺伝子」を持つ鹿島が波乱を起こす!?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

「僕自身40歳までプレイしたし、僕はベテランを信じている」

 10月5日に行なわれたJ1第28節の対FC東京戦でも、鹿島はさすがのベテランの味を見せつけた。

 結果から言えば、4-1で鹿島の勝利。しかし、内容的に見れば、FC東京のランコ・ポポヴィッチ監督が「流れのなかからの決定機は、うちのほうが作れた」と振り返るように、これほどの大差がつく試合ではなかった。

 にもかかわらず、4点を奪って完勝を収めた理由を、トニーニョ・セレーゾ監督はこんな言葉で話している。

「FC東京とはオープンな試合になる。互いにゴールを目指してやっているし、どちらが勝ってもおかしくなかった。だが、うちは細かいところの気配りを持続できた」

 確かにボールポゼッションで上回り、敵陣に攻め込む回数が多かったのはFC東京のほうだ。だが、相手の一瞬のスキをついたチャンスを確実にモノにし、次々と加点していったのは鹿島のほうだった。

 とはいえ、今の鹿島の強さは決してベテラン頼みで成り立っているわけではない。FC東京戦のメンバーを見ても、控えを含めた18名のうち、20代前半(20~24歳)の選手が8名を数える。

 年齢分布で言えば、やや中堅層が手薄な印象は否めないが、"王者の遺伝子"を引き継ぐべく、MF柴崎岳(21歳)ら若手は着実に育ってきている。トニーニョ・セレーゾ監督も「ベテランには経験値はあるが、タイトな日程だと体が心についてこない。そのなかで若手を使っていく」と期待を込め、こう語る。

「うちには優秀な若手がいる。経験値や戦う姿勢という部分ではもう少しだが、彼らには学ぼうという姿勢がある。ただこなすのではなく、積極的に吸収しようとすれば、学ぶスピードは変わってくる」

 例えば、現在J2降格の危機にさらされている磐田(リーグ優勝3回)、あるいはすでにJ2が主戦場になりつつある東京V(リーグ優勝2回)などを見ても分かるように、一時代を築いたクラブであっても、継続的にトップレベルの力を維持することは簡単ではない。その最大の要因は、おそらく世代交代の難しさにある。

 ところが、20年のJリーグの歴史を振り返ると、鹿島だけは例外だ。もちろん、そのなかで浮き沈みはあったものの、"沈み"を最小限に抑え、毎年のようにタイトルを取り続けている。気がつけば、手元にあるタイトルは16に達した(リーグ優勝7回、ナビスコカップ5回、天皇杯4回)。

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