「日本のシャビ」田口泰士(名古屋)の可能性 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中西祐介/アフロスポーツ●写真

「守備は中学の頃の経験が生きているかもしれません」

 田口は回顧する。

「自分がFWをやっていて、相手のボランチにすごく首を振って自分の位置を確認してくる奴がいたんです。その動きがすごくうざくて。なかなかフリーでボールをもらえなかったんです。だから、今もそれをしているだけというか。あえてコースを消さずに開けておいて、そこを狙ってボールを奪う、というのはベスト。自分も首を振って周りを見るのは昔から癖なので、相手が嫌なことをやっているだけです」

 無論、ラウルに憧れていたくらいなので、その攻撃力も捨てがたい。リーグでの得点数は多くはないが、ミドルシュートには非凡なものがある。キックの質はJリーグ屈指で、並み居るキッカーを擁するグランパスでプレースキックを任されることもある。体幹が強いからか、動きながらでも上体をぶらさずに鋭いキックができる。

「俺は元々が攻撃の選手なんで、前には行きたいっすよ。でも、バランスを考えちゃうところもあるんですよ。グランパスは前に行きたがる選手が多いし……。それに、“前がかりになってミスをして失点する”という怖さもあります。まあ、余計なことを考えて逃げているということかもしれません。ボランチで得点できる選手がベストなんだとは思ってはいますから」

 田口はそこで間を置いて、こう続けた。

「今は久々にスタメンを外れているんで、弱気になっているのかもしれません」

 Jリーグ第15節の大宮戦、田口はスローインのボールをアウトサイドで前につなごうとし、それが敵に奪われる形となり、カウンターを食らって失点した。

「試合後に、ストイコビッチ監督から『あのパスはないぞ』と叱られました。それまで1-0で勝っていて、結果的に逆転負けすることになったんで。それからスタメンから外れて、チームは連勝しているんですよ」

 彼は唇を噛んだが、悪いことは重なる。第18節は久々に交代で出場機会を得て、勝ち試合をクローズしようと何度もパスカットを成功させていたが、不運にも転倒したときに頭を打ち、脳震盪で意識が飛んだ。終盤の数分、何が起こったのか、さっぱり覚えていない。次節も安静のため欠場することになってしまった。

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