データは最下位でも首位キープ。
横浜F・マリノスの「隠れた正体」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 だが、横浜FMにしても広島や浦和ほど極端ではないものの、ポゼッション志向である。それどころか、安定したポゼッションで相手を押し込み、ボールを一度失っても高い位置からのプレスで奪い返す質の高いサッカーは現在のJ1では屈指と言ってもいい。にもかかわらず、これほど極端な結果が出るのはなぜなのだろうか。

 すぐに思い浮かぶのは、横浜FMの平均年齢の高さである。主力には中澤佑二(35歳)、ドゥトラ(40歳)、中村俊輔(35歳)、マルキーニョス(37歳)とベテランが多く、スタミナ面に不安がある一方で経験豊富。ファールなどで試合が止まったときに、巧みに時間を使ってひと息入れているのかもしれないと想像できる。
 
 ならばと、9月14日に行なわれた第25節セレッソ大阪戦で、両チームがフリーキック(FK)やコーナーキック(CK)にどれくらい時間をかけているのか、手元のストップウォッチで計測してみた。すると、C大阪が長くても30秒前後でリスタートしていたのに対し、横浜FMは総じて30秒以上、場合によっては1分近い時間をかけていた。どうやら横浜FMには、セットプレイに時間をかける傾向はあるようだ。

 ただし、これはFKやCKを得た位置や状況にもよるため、単純に時間だけを比較することはできない。ましてFKの名手である中村を擁する横浜FMにとって、FKは大きな見せ場。じっくり準備する様もまた、ひとつのエンターテインメントである。少なくとも試合を見ていて違和感を覚えるほどに、横浜FMが時間をかけている印象はなかった。

 樋口靖洋・横浜FM監督に尋ねてみても、「(APTは)あまり気にしていない」とのこと。「うちはリーグで一番ファールを受けている(被ファウル数がリーグトップ)。それでプレイが止まることが要因ではないか」というのが、指揮官の見立てである。

 実際、よくよくデータを探ってみると、横浜FMが意図的にAPTを短くし、優位に試合を進めようとしているわけではなさそうだ。

 横浜FMの第24節までをAPTの長さにより、①50分未満、②50分以上55分未満、③55分以上の3段階に分類し、それぞれの試合結果をまとめると、次のようになる。

① 3勝4分け3敗(10試合)
② 6勝1分け2敗(9試合)
③ 5勝(5試合)

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