香川、柿谷、南野...。若手を次々輩出する「セレッソの企業秘密」 (4ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 益田佑一●撮影(試合) photo by Masuda Yuichi

 さて、柿谷もセレッソの下部組織で育った選手だが、ハナサカクラブが誕生する前、16歳にしてトップチームに昇格している(2006年)。彼については、他の選手とは違う育成法が用いられたが、それはなぜか。

「(柿谷は)正真正銘の本物でした」。そう言ったのは、宮本氏だ。

「曜一朗は、絶えずカテゴリーアップさせるしかなかった。例えば、ユースに上げたとき、まだ中学生だったけど、すぐにユースの基準を超えてしまった。曜一朗に合わせて練習をすると、周りの選手が付いていけない。逆に周りの選手に合わせると、曜一朗が育たない。遊んじゃう。コーチの意図を先読みしてしまう。だから、16歳でトップに上げることになったんですけど、そこで彼の人間形成の過程で、(J2の)徳島ヴォルティスに行く必要があったんです」

 その言葉どおりに、柿谷は2009年の途中から徳島にレンタルされ(97試合14得点)、プレイだけでなく、人間的にもひと回り大きくなって2012年、セレッソに復帰した。柿谷のメンタル面の成長において、徳島で過ごす時間が必要だったということについては、梶野氏も同意する。

「曜一朗が小学生でスクールに来ていたとき、僕も見ていたんですけど、当時も今もプレイ面では基本的に変わってない。何が変わったかって、メンタルです。徳島に行って、人との出会いが曜一朗を成長させたんだと思います。今は精神面が整っている気がする。だから、持てる力を発揮できるようになったんじゃないかな」

 そんな宮本氏、梶野氏のふたりがともに太鼓判を押すのが、今年のルーキー、南野だ。

「拓実は、我々が『こういう選手を育てたい』という理想像を体現している選手。スピードもあって、クイックネスもあって、走れる。攻守両面に関わり続けることができて、周りも見られる。曜一朗は確かにスーパーだったけど、レギュラーになるのに必要なものを身に付けるまで何年もかかった。真司だって2年かかっている。でも、拓実は1年目ですでにすべてを備えている」(宮本氏)

「拓実は技術があるのはもちろん、走れるし、戦えるんだけど、何がすごいかって、メンタルなんです。負けず嫌いの部分も強いし、先を見据えて準備できる部分もそう。そうしたメンタル面がしっかりしている選手です」(梶野氏)

 セレッソは、2010年にリーグ3位となり、翌年にはクラブ史上初めてAFCチャンピオンズリーグに出場したが、わずか3シーズン前のことなのに、当時と今では攻撃陣の顔ぶれはすっかり変わった。それでも「攻撃サッカー」と「育成型クラブ」の薫りを嗅ぎ取れるのは、哲学が浸透しているからに他ならない。

 南野の下の世代も着々と育っているばかりか、「真司や乾、キヨを将来、買い戻したいですね。だって、お客さんも見たいでしょ(笑)」と宮本氏は言う。

 育成型で攻撃サッカーを掲げるセレッソ大阪が、この先、Jリーグと日本代表に活気をもたらしてくれることは間違いなさそうだ。

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