「最強レッズ」が首位に立てない最大の理由 (2ページ目)

  • 小齋秀樹●文 text by Kosai Hideki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 横浜(39得点22失点)と広島(37得点18失点)は、それぞれ似たような数字だが、浦和は得点数で両チームを上回りながら、同時に失点も2チームより格段に多い。

 43得点30失点だ。

 この上位チームと比較した得失点数の差が、指揮官の哲学を示し、とりわけ失点数の差が、突き抜けられない要因の大部分を占めてもいる。

 Jリーグファンなら周知のことだが、広島と浦和のサッカーは酷似している。どちらもベースには、ペトロヴィッチ監督の攻撃的なサッカー哲学があるからだ。広島の場合は、ペトロヴィッチ監督(2006年6月から2011年まで指揮)の後任となった森保一監督が、昨季守備の要素を付け加えて、タイトル獲得に成功した。

 昨年広島で優勝を経験し、今季から浦和の一員となった森脇良太はこう振り返る。
「森保さんがよく言っていたのは、『受けている時間帯はしっかり受けよう』ということ。(相手の攻撃に)耐えるところは耐えて、という部分が成長したのかなと思います」

 森保体制では、守備に重点を置いた戦術練習も採り入れられ、全体のトレーニング後にDF陣だけでクロスへの対処練習をすることもあったという。そうして、守備面に力を注いだ分、森脇は「攻撃が1、2割、難しくなったところもあった」と振り返ったが、そのバランス補正が、もたらしたものは大きかった。

 広島は、前年の2011シーズンは49失点だったのが、優勝した2012年は34失点へと減少。反対に、得点は11点増えている。本来なら、守備に力を入れれば得点は減りそうなものだが、広島の場合は守備への傾注が得点増をもたらしたと言える。例えば、0-1でリードされて、引いた相手からゴールを奪うのと、0-0の状況から得点するのとでは困難さがまったく違う。さらに言えば、リードした状況下でなら相手が攻め込んでくる分、得点はしやすくなる。

 ならば、浦和も守備を強化したら、状況が一変するのではないか、と考えても不思議はない。

「それでも、2点取られても、3点取るサッカーで優勝を目指したい」と、森脇は言う。

 この心情には、多分にミシャを慕う気持ちも含まれていると感じる。森脇に限らず、まだJ1でのタイトル獲得がない指揮官を「優勝させてあげたい」と語る選手は非常に多い。

 2点取られても、3点取るサッカー。失点を減らすことを考えるよりも、どれだけ多くのゴールを奪うかを追求するサッカー。

 それは、もはや「ロマン」と呼んでも差し支えないだろう。個人的にはこのロマンを強く支持したいが、タイトル奪取を至上とするならば、守備面へのテコ入れ・戦術の微調整は必須だろう。

 はたして指揮官は、そのロマンを実現したうえでタイトルをも手に入れるのか。ロマンとの心中に終わってしまうのか。それとも、ロマンを捨てて、勝ち点3という実益に走ることがあるのか――。やはり、浦和レッズからは目が離せない。

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