ストライカー・柿谷曜一朗の最大の長所とは何か? (3ページ目)

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 ただし、これから先は東アジアカップで対戦したレベルのチームと戦うことを前提にしているわけではない。日本代表の目指すところが「W杯本大会でのベスト8」なのであれば、6月のコンフェデ杯で対戦したクラス(ブラジル、イタリア、メキシコ)から、勝利しなくてはいけない。今回対戦する南米王者のウルグアイも高いレベルのチームであり、圧倒される局面もあるはずだ。そうした相手に柿谷がどこまでできるか楽しみでもある。ルガーノら世界的なレベルのディフェンダーと対峙することになるので、柿谷がフィジカルも含めてどこまでできるのか興味深い。

 柿谷の課題のひとつは、質の高いプレイの量を増やしていくことだろう。質に関しては、決定力、技術力、オフザボールの動き、DFとの駆け引きなど、本当に素晴らしいものがある。ただ、その量に関して言うと、やや物足りなさがある。また、どのぐらい前線で起点になれるかもポイントになる。ザッケローニ監督のサッカーの基本スタイルは、前線で起点を作って2列目の選手を生かすことにある。そのため、今まで前田遼一がやっていた仕事を柿谷も求められるはずだ。

 U-17W杯で活躍し、10代で注目を集めた柿谷は、その後挫折も経験した。セレッソ大阪からJ2の徳島に移籍するなどさまざまな経験を積み、今、本来の力が出せるようになってきている。インタビューの受け答えはしっかりしているし、頭の中が非常に整理されていて、客観的にサッカーを見ることができている。ひとりの人間として、ひとりのプロサッカー選手としてメンタルが安定しており、代表メンバーとしてやっていく準備ができているといえる。

 もともと才能豊かな選手が、紆余曲折がありながら経験を積んで、ピッチに立って結果を残している。「このまま駄目になってしまうのではないか」と言われることもあっただろう。その選手が、人間としてひと回り大きくなって活躍していることに価値があると思う。

 柿谷は、技術力や能力に関して、若い時からずば抜けていた。ただ、10代のころはその技術や力をコントロールする心の部分が整っていなかった。それが今、うまくコントロールできるようになっている。今季Jリーグで12ゴール(20節終了時点)を決めており、点をとるバリエーションも豊富で、ゴール前の厳しいエリアでも高いレベルでプレイができている。

 海外組が入る今回の日本代表の中に柿谷が加わることでどんな化学反応が起きるのか。本田圭佑、香川真司、岡崎慎司らと、柿谷がどう連動するのか。そこが最大の楽しみであり、もっと見てみたいと思わせる選手であることは間違いない。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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