柏対鳥栖で「東アジア組」が激突。
代表入りへアピールできたのは誰か?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by AFLOSPORT

「試合展開がバタバタしていたけど、クレオとレアンドロがチャンスを作ってくれたので流し込むだけだった。チームメイトに感謝したい」

 工藤の言葉どおり、クレオのパスをレアンドロ・ドミンゲスが頭で落とし、完璧なラストパスとしたことで先制ゴールが生まれたのは事実である。

 しかし、中央でパスがつながった瞬間、ゴール前のスペースを見逃さなかった工藤の"嗅覚"がなければ、ゴールは生まれなかったに違いない。それまでの試合展開を考えると、一瞬のスキをついた工藤のゴールが、鳥栖に与えたダメージは大きかったはずだ。

 工藤とは対照的にこの日不発に終わったのは、同じく日本代表として東アジアカップに出場した、FW豊田陽平である。

 鳥栖の背番号11は試合を振り返り、「チャンスはあったが、(ゴールを決められなかったのは)実力不足」と言葉少な。前節まで4試合続いていた連続試合ゴール記録が途絶えたことについても、「5試合連続(ゴールがなるかどうか)はメディアの方が盛り上がっているだけ。チームが勝たないと意味はない」と吐き捨てた。

 後半に入り、1点を追う鳥栖がチャンスを作れずにいると、再び右サイドからゴール前へ走り込んだ工藤が、レアンドロ・ドミンゲスのパスをワンタッチでゴール左スミに流し込む。65分のこのゴールで点差は2に広がり、事実上、勝負は決した。

 厳しい自己評価を下す一方で、工藤については「前半見ている感じでは(体が)重そうだったが、最後のところで仕事をしてきた」と語った豊田は、「周りの選手も工藤の生かし方を知っている」と、勝った相手には賛辞を送った。

 豊田が話したように、柏はブラジル人トリオ(クレオ、ジョルジ・ワグネル、レアンドロ・ドミンゲス)を中心に左サイドや中央でパスをつなぎ、工藤が右サイドからタイミングよく、DFラインの背後を狙うという形が何度もできていた。レアンドロ・ドミンゲス-工藤というホットラインから2ゴールが生まれるのも当然だった。

 今季通算ゴール数を12に伸ばした工藤は「まだまだ少ない。自分がもっと決めれば、チームも上位に行けると思う」と話していたが、得点パターンが確立されつつある今、まだまだ工藤のゴール数は増えそうだ。

 ふたりの日本代表FWにとっては、くっきりと明暗が分かれる結果となった。だが、そこに大きな影響を及ぼしていたのは、もうひとりの日本代表、柏のDF鈴木大輔である。

 鈴木は「代表を経験して、個人的に自信を持ってやれている」と語り、こう続ける。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る