漫画家とノンフィクション作家が語る「サッカー選手の描き方」

中村 すごい野生ですね。小宮さん的にはギラギラした選手のほうが作品にしやすかったりしますか。

小宮 昔はそのほうがやりやすかったけど、今はギラギラしていればそれは面白いし、すべてを溜め込んでいる選手がそれを放出する瞬間も面白い。戦っている人にはみんなドラマがあると思うんです。特にサッカー選手の場合、最前線にいられるのは長くても10年ですから、その10年の中で命を燃やすのは、やはり僕らの人生とはまったく違う。

――ギラギラした選手を作品に登場させたいと思うことはありませんか。

中村 描きたいけど、でも難しいと思います。僕にはないものなので、取材をしたり、想像力を駆使したりして、僕自身がレベルアップしないといけない。

小宮 漫画に登場するキャラクターはどうやって作っていくんですか。

中村 どのキャラクターも何割かは僕自身です。それに小宮さんの作品のようなノンフィクションを読んだり、取材をしたりしてエッセンスを足していきます。

小宮 主人公は自分の一部なんですね。

中村 おそらく。キャラが泣いているときは僕も泣いている気持ちです。あとは自分がこうなりたいという希望の一部というのもあります。

小宮 かなりの量の資料を読むそうですね。

中村 僕自身、サッカーは好きだけれど、まったく詳しくはないですから。情報はあったらあったで説得力のある嘘がつけます。取材も、例えばスカウトが主人公の回では、川崎フロンターレのスカウトの方にお話を聞きました。スカウトをする際、そのチームのユニフォームが似合うかどうかを想像するとおっしゃっていた。そういった話を一度自分の中に吸収してから、漫画に描いています。

――おふたりに共通しているのは、サッカーを扱いながら、あくまで人間にフォーカスしているところです。

中村 プレイを漫画で描いても仕方がないというか、サッカーは実物を見たほうが面白いですから。

小宮 僕はサッカーをやっていたし、もちろんサッカーが好きですが、人間の物語のほうに惹かれます。

中村 僕は高校時代、陸上をやっていたのですが、やはりサッカーより波乱が少ないですね。

小宮 陸上を突き詰めたいと思ったことはありましたか。

中村 そこそこ強い高校だったのですが、陸上は親が運動部に入れというので入っただけという感じでした。僕がやりたかったのは漫画だけでした。

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