プロサッカー選手育成のために必要な環境とは?

  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 プロクラブの監督であれば、ある選手を何試合か試して、改善が見られないともう駄目だと判断して起用しない。そして、「どこかの別のチームに行きなさい」と言う。選手の年齢によってその決断をするまでの期間の幅は違うにしても、監督や指導者はどこかで「明日から来なくていい」と選手に伝えなくてはいけない。

 ユースはそんなプロチームの予備軍。「頑張れ」と言って励ますことや、サッカーの楽しさを教えることも必要だが、楽しいだけではなく、育成段階から本当の意味での厳しさを教えていくべきだ。入団テストに合格すれば、全員がプロ選手に育ててもらえると思ったら大間違いで、そこには厳しい競争がなければいけない。

 同時に、育成はタイミングも重要で、能力があるからといって下のカテゴリーから上のカテゴリーにすぐに上げればいいというわけではない。いきなりレベルの高いところでプレイして選手が自信を失ってしまうこともあれば、反対に、それがいい刺激になることもある。メリットとデメリットは必ずある。それによって、成長の速度が早まることも、遅くなることもある。遅咲きの選手もいるし、早熟な選手もいる。そして、それを見きわめる経験のある指導者が必要になってくる。

 ただし、「この子はプロとしての資質を持っている」と指導者が思ったとしても、その全員がプロとして大成するわけではない。コーチもたくさん失敗をするし、多くの脱落者が出る。それがプロスポーツというものだ。

 また、サッカーが駄目になったからといって、コーチがその子のすべてを否定したわけではない。ユースの指導者は、あくまでも「この子はプロの選手としてこのクラブでやっていくのは難しい」という決断をしただけだ。だからこそ、指導者たちは、「君たちの中でトップに行けるのはほんの一握り。それが駄目だった時のこともきちんと考えて、学校の勉強もしなさい。サッカー選手以外の道があるということも知っていなければいけない」ということを、日頃から子どもたちに伝えておくべきだろう。

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