躍動するミスター・セレッソ。柿谷曜一朗を代表に呼ぶなら「今」だ

  • 前田敏勝●文 text by Maeda Toshikatsu
  • photo by Takahashi Manabu

 そんな柿谷を、頼もしそうに見つめる姿があった。柿谷を幼い頃から見ていた小菊昭雄コーチだ。
「彼はこの1年、2年で、本当に大人になりました。物事の前向きな捉え方、リーダーとしての自覚、チームを引っ張る姿など、大きな成長を感じます」

 現在のチームでは、下部組織出身者として最年長となる柿谷。人間としても、ひと回りも、ふた回りも成長し、まさに若きチームをけん引。自身が愛するクラブで、持てる力を遺憾なく発揮しているのだ。

 当の本人は「試合を通してみれば、ミスも多くて反省すべき点もある」と、現状に決して満足することはないが、注目されることが自身のエネルギーになっているという。
「ファンをはじめ、チーム関係者など、みんなに期待してもらっているのはわかっている。その分、なんとかせなあかん、という気持ちになる」

 周囲の期待に応えようと奮闘する柿谷の仕事ぶりは、チームメイトも評価する。長年、柿谷と一緒にプレイしてきた主将の藤本康太はこう語る。
「プレイの面においては、(自分が)チームを引っ張っていこうというのが見えるし、すごく献身的になりました。ほんと、『チームのために』動いているし、ピッチの中で『いくぞ!』という気持ちが出ている。今は、みんなが『8番』という背番号、つまり曜一朗の背中に、引っ張られているような感じがします。後ろから見ていて、すごく頼り甲斐がありますし、『あいつが決めてくれる』と思っているから守備陣もがんばれている」

 昨季は、シーズン終盤までJ1残留争いをしていたセレッソ。それが、今季は12節を終えて5勝5分け2敗で勝ち点20、順位は6位と好位置につけている。その原動力になっているのは、間違いなく柿谷なのだ。だからこそ、その「力」を日本代表に! という声も日増しに高まっている。

 セレッソから輩出された、すべての代表選手を見てきた小菊コーチもそのひとりだ。
「(香川)真司、(乾)貴士、キヨ(清武弘嗣)など、僕が見てきたいろんな選手の中でも、もともと持ち合わせている、ボールを扱う技術とか、センスとかは、曜一朗がいちばん長(た)けていると思います。ただ以前は、アシストや局面のボール扱いにこだわっていたり、もっと厳しいことを言えば、勝敗よりも自分のパフォーマンスにこだわったりしているところがありました。しかし今は、自分のことよりも、チームの勝利や結果というものを大事にしています。そういう気持ちを持った彼が、結果を出すのは当然のことだと思います。そうそうたる顔触れと一緒に『日の丸』をつけるのも、時間の問題なのではないでしょうか」

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