2013.05.05

スタメン総年俸はガンバ遠藤ひとり分?
昇格初年度の長崎がJ2で躍進中

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLOSPORT

「走り負けないチームだな、とは思いますね」

 そう説明するのは、2009年にJFLの長崎に入団してもがき苦しみながらJリーグ復帰を果たした、チームキャプテンの佐藤由紀彦(36歳)だ。横浜F・マリノス時代はJリーグ連覇に貢献し、柏レイソルではJ1昇格に尽力した経験がある。

「長崎の選手たちは真面目に走るというか、とにかく迷いがないですね。その中で開幕から実際に勝っていることで、かなり自信にもなっている。(心理状態が)いいベクトルに向かっているのは間違いなくて、それは試合をするうえでのアドバンテージになっていると思います」

 スタイルとしては、究極的なリアクションサッカーだろう。

 ボールを前に運ぶのは精度の高い技術とコンビネーションが必要であり、相手がボールを運ぶところを潰してカウンターの形を作る方がリスクの少ない攻撃を仕掛けられる。そこで、"一兵卒たち"は健気なまでに走り回る。

 相手に自由を与えず、コントロールミスを誘発させ、鋭い出足でこぼれ球を拾う。執拗なまでの守備で試合運びに安定感が出て、カウンター攻撃にも自信がついたのだ。

 ここまでのところ、多くの対戦相手が長崎を侮って攻めてきては、術中にはまって敗れている。

「もしかすると今が(J1昇格に向けての)チャンスなのかもしれません」

 そう語る由紀彦は、現在はハムストリングを負傷し、6月の復帰に向けてリハビリを開始している。

「自分はJFL昇格の時から長く長崎を見ています。だから、クラブのフロントの人たちの苦労も分かるんですよ。今は初めてのJリーグで戦うなか、周りの人たちが"とにかくプレイヤーズファースト"に協力してくれている。そうしたみんなの想いが、パッションとして選手にも伝わり、"上へ、前へ"という戦う気持ちになっている。それは、他のクラブとは違う"昇格クラブ"独特の強みですかね」

 長崎の若い選手たちは高木監督の号令に従い、戦いの成果を上げている。

 ただ、これからは相手も長崎を見下すような戦いはしなくなるだろう。長崎と同じように無理をしないリアクションサッカーに切り替え、お互いのミスを待つような形になっていく公算が高い。その場合、自分たちのアクションの部分で相手を切り崩せるか、その部分が問われる。走って奪ってさらに走る--。それ一辺倒では、やがて情勢は厳しくなるだろう。