進境著しい鹿島の柴崎岳。豪快ロング弾でザックに猛アピール (2ページ目)

  • 小室 功●文 text by Komuro Isao
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 だが、ポーカーフェイスに隠された、たぎる思いには並々ならぬものがある。昨年12月3日に行なわれたJリーグアウォーズでベストヤングプレーヤー賞を受賞した際、「この賞に値する選手はゼロ人。それは、自分も含めて」と言って、周囲を驚かせた。

 世界に目を向ければ、ミラン(イタリア)のエル・シャーラウィやレアル・マドリード(スペイン)のバラン、サントス(ブラジル)のネイマールなど、20歳前後の選手が世界のトップレベルで強烈な印象を残している。それに比べて、自分はそこまでの活躍を示せていない、というじくじたる思いから出た言葉だろう。

 柴崎の視線の先には、いつだって世界がある。
「彼らに、一歩でも近づくような選手にならなければいけない」とキッパリ。選手としての志の高さを垣間見せた瞬間でもあった。

 鹿島では攻撃的MFや右サイドバックでの起用も少なくないが、本職はボランチだ。「自分はスピードがあるわけでもないし、パワーがあるわけでもない。違うところで勝負しないといけない」と語るとおり、プレイヤーとしての基盤となっているのは、紛れもなくスキルとインテリジャンス、そして運動量に他ならない。

 試合中の柴崎を追って見ていると、「止めて、蹴る、そして走る」といった、いたってシンプルなプレイの連続であることに気づかされる。ただ、それが実に質が高いのだ。だからだろう、バルセロナ(スペイン)のシャビのプレイスタイルを引き合いに出されることが多い。

 堅実さが優先されるポジションゆえ、周囲に衝撃を与えるようなプレイ機会はそうめぐってこない。だが、昨年11月のナビスコカップ決勝で2得点を挙げ、大会連覇に貢献したことは記憶に新しい。文句なしのMVP獲得だった。

 もちろん、課題もある。中盤でボールを散らし、攻撃のリズムを作るだけではなく、ゴールに迫る回数をいかに増やせるか。得点なり、アシストなりに、どうかかわっていけるか。彼自身、意識しながら取り組んでいる。

 柴崎は、確かな成長曲線を描いている。こうなると「日本代表入り」を推す声が日増しに高まっていくのも自然だ。
「代表チームは、常に目標となる場所。選手である以上、もちろんワールドカップに出てみたい」と、本人も公言してはばからない。

 昨年2月、初招集されたものの、その後はお呼びがかかっていない。ザッケローニ監督のここまでのチーム作りからしても、ボランチの序列が劇的に変わるのは予想しにくいが、今季はここまでリーグ8戦フル出場、2得点と気を吐いている柴崎。一度くらいチャンスを与える材料は、十分過ぎるほどそろっているはずだ。

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