大宮加速。5連勝の要因は「1対1」の守備にあり (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki


 柏の右サイドバック、藤田優人は果敢な攻撃参加が武器。この試合でも、序盤から右MFのレアンドロ・ドミンゲスと連携し、右サイド深くまで攻め上がっていた。

 だが、大宮にとってはそんな柏の長所こそが狙い目だった。

 柏が連続してチャンスを作り、先にペースを握ったかに見えた前半18分。スペースが生じた柏の右サイド、すなわち大宮から見て左サイドをMFチョ・ヨンチョルが的確に突いてクロスを入れると、ゴール前でFWノヴァコビッチがこれを押し込み、目論見通りに先制したのである。

 先制点を含め、この日2ゴールを挙げたノヴァコビッチが胸を張って語る。

「相手の右サイドバックが高い位置を取るので、ボールを奪えばサイドにスペースが空く。そこをうまく突いて得点できた。(対戦相手の)分析をもとに勝利に結びつけられたことは評価できる」

 その後、リズムに乗った大宮は強固なディフェンスで相手に決定機を与えず、その一方で着実に追加点を奪い、終わって見れば4-0。「最高のプレイ」を見た後とあって、ベルデニック監督の舌も滑らかだった。

「守備はコンパクトに、かつアグレッシブにできたし、攻撃でも(テーマとしていた)カウンターだけでなく、テンポよくボールを動かし、相手を揺さぶることもできた」

 対照的に、大宮の勢いを目の当たりにした敵将は舌を巻くしかなかった。柏のネルシーニョ監督は、現在の大宮を「チームとしてまとまっている」とし、こう評した。

「チャンスを決める力に、今年の彼らは優れている。彼らはカウンターの成功経験が染みつき、自信になっている。だから、ここというところで落ち着いてプレイできているのではないだろうか」

 とはいえ、4-0はさすがに出来過ぎだ。大宮の強みは、あくまでも「粘り強い守備」にある。最近2試合を見ても、浦和、柏といった今季の優勝候補を相手に押されながらもしっかりと無失点に抑えていることこそが、大宮の勢いを加速させている最大の要因である。

 何より大宮の守備はバランスがいい。最後方に選手を余らせて守備に厚みを持たせるということをせず、ピッチ上のあらゆる場所で『1対1』を作り出すことをベースに考えられているから、全体のバランスを崩してしまうことがないのだろう。

 相手選手を一気に囲い込んでボールを奪い取ることもないが、裏を返せば、そこでボールを奪えなかったときに、相手選手を簡単にフリーにしてしまうリスクもない。ピッチ上の至るところで生まれる1対1の局面で、選手一人ひとりが厳しく、粘り強くボールを奪い取りに行くことで、大宮のディフェンスは成り立っている。

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