【フットサル】木暮賢一郎「選手じゃない立場でやりたいことが出てきた」 (3ページ目)

  • 北 健一郎●取材・文 text by Kita Kenichiro
  • photo by AFLO SPORT

「試合に出ようが出まいが、アップであったり試合中に声を出したりってことはプロとしてはやらないといけない最低ラインだと思うし。それができない選手に対しては僕自身厳しくしてきましたから。自分としては、たまたま引退するタイミングと、出てないってことが重なっただけ。もちろん選手だからむかつくこともありました。ありますけど、そういう苦しいときに逃げずにやることで、学べるということは自分の経験を通して感じてきましたから」

 木暮が試合に出られていないことを聞きつけ、心配して連絡をくれた人がいた。ワールドカップで共に戦ったカズだった。カズと木暮はワールドカップ期間中に親交を深めていた。

「自分も人間ですから多少浮き沈みがある中で、カズさんから電話をもらって。『グレ(木暮)だからやってると思うけど、そういう状況でもアップから一生懸命やって、味方に声かけて、そういう立ち振る舞いをしないと。みんなグレを見てるから』と。自分がやってることは間違っていないなと思えたし、救われましたね」

 木暮の現役ラストゲームは全日本選手権の決勝戦だった。木暮はピッチに立つことができなかった。だが、最後の最後まで試合に出る準備をし、チームのために声を出し続けた。PK戦を制して優勝が決まった瞬間は涙を流した。理想的な終わり方ではなかった。しかし、木暮は最後までプロとしてやるべきことをやり抜いた。

 木暮には"第二の人生"でやりたいことがある。

「日本代表の監督になってワールドカップで優勝するというのは夢の一つです。だけど、もうちょっとグローバルに、ブラジルやスペインのように子供のころからフットサルをプレーする環境を作ったり、サッカーとフットサルが良い形で連携をすることにチャレンジしていきたいと思います。自分の人生を変えてくれた、このフットサルというスポーツをもっともっと良くしたい。国内だけじゃなくて、世界的にもフットサルが認められるようにすることが目標です」

 何もない時代から日本のフットサルを作ってきた男は、すでに新たな目標に向かって走り始めている。

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