【日本代表】モチベーターとしてのザッケローニとなでしこ佐々木監督の共通点 (3ページ目)

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 また、選手がメディアや第三者から自分の情報を得た時に、監督に直接言われるより影響が大きいこともある。たとえば、コーチから「監督があのプレイを評価している」と言われると、選手は非常に嬉しい。逆に、監督が特定の選手のことをメディアで「ひどい」と言ったことをその選手が記事やテレビで知ると、直接言われるよりショックが大きいこともある。

 メディア対応ということでは、ロンドン五輪で女子サッカーの佐々木則夫監督が宮間あやのことを頻繁に記者会見で話していたことが印象に残っている。そのとき、私が試合を見た限り、それほど宮間の出来は良くなかった。実際、会見でそういう質問も出ていた。

 その質問に対して、佐々木監督は「彼女はキャプテンとしてよくやっている」と答えた。そして、試合前にチーム全員が宮間の言葉でひとつになった、というエピソードを紹介した。 

 本来、試合前のドレッシングルームの話をする必要はないはずのところで、しかもそのとき1回だけではなく、その後も宮間のことについてふれることが佐々木監督は多かった。宮間の出来が良くないとメディアが再び言い始めたときも、佐々木監督は彼女を擁護し、ときには、記者に聞かれてもいないのに宮間のことを話しはじめることもあった。それは、宮間のモチベーションを落とさないようにするためでもあったと思うし、庇(かば)うということもあっただろう。メディアに対してうまく対応しているな、という印象だった。

 このように、監督がメディアにどう対応するかで、選手のモチベーションをキープする、あるいは、選手を守ることができる。つまり、監督は何も考えずに会見で言葉を繰り出すことができない職業であり、その発言が、選手のモチベーションを上げることもあるし下げることもある。

 同時に、監督は、どんなことをしていたか、何をしゃべったか、どんな表情をしていたかということを、選手にいつも見られてもいる。

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