【日本代表】モチベーターとしてのザッケローニとなでしこ佐々木監督の共通点 (2ページ目)

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 そうした映像や写真でチームの集中力がぐっと高まって、いい精神状態で試合に臨める。選手にとって、モチベーションがいかに重要か、よく現れているエピソードだと思う。

 選手のモチベーションを高める、またはメッセージを伝えるために、記者会見やメディアを有効に使う監督も多い。たとえばザッケローニ監督は、2月のラトビア戦のメンバー発表の記者会見で、招集しなかった中村憲剛、栗原勇蔵、駒野友一らについて、「今回は呼んでいないが、Jリーグ開幕前だから呼んでいないだけで、彼らのことはちゃんと見ている」と話していた。

 そういう監督のコメントを受け止めて、選手は、チームで結果を出せばまた呼んでもらえる、と思うだろう。つまり、ほとんどの選手は、監督やコーチに見てもらっているか、気にかけてもらっているかどうかを、常に気にしているものだ。

 監督から「この間の試合はよかった」あるいは「ここを直すほうがいい」と言われたら、評価の善し悪しはどちらでも、「ああ、見てくれているんだな、気にかけてもらっているんだな」ということがわかって非常に嬉しいもので、安心する。評価をしてくれているというのは、見られている証拠だからだ。

 自分は無視されていない、気にかけてもらっていると思えることは、人がモチベーションを高める要因のひとつだろう。これは、サッカーチームも会社も一緒。組織論としては当たり前のことかもしれないが、監督でも上司でも、「お前がやってくれ」ではなくてその選手や部下の名前を呼ぶことは非常に重要だ。

 心理学的な観点から考えると、人が一番辛いのは無視されることだという。これは、忘れられるということでもある。嫌われるのでもなく、好意を持たれるのでもなく、関心を持たれずに存在を無視されるのがもっとも辛い。だから、監督が選手に声をかけて、気にしているよということが伝わるだけで、選手のモチベーションは違ってくる。

 野村克也さんが以前お話しされていた、選手に接するときの姿勢というのは、「無視・称賛・非難」の3つ。まず、無視する選手というのは、残念ながらまったくの戦力外ということ。そこに時間と力は使わないということだ。次に、若くてこれから伸びてくる選手は称賛をする。そして、経験があってたくさんお金をもらっている主力やベテランは非難していく。称賛も非難も、目をかけているということでは同じだ。

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