【Jリーグ】鹿島復活へ、セレーゾ監督に託された「不変性」 (2ページ目)

  • 内田知宏(報知新聞社)●文 text by Uchida Tomohiro(The Hochi Shimbun)
  • photo by Kazuya Gondo/AFLO SPORT

 セレーゾ監督の1次政権時、クラブは大きな赤字を抱え、予算を大きく削らざるを得なくなった。選手の年俸を抑制するのと同時に、監督の年俸も大きく抑えることになった。就任5、6年目などは、鹿島の外国人監督で史上最低の年俸だったという。

 当然、移籍金を払って、新しい選手を獲得することなどできない状況だった。それでも、セレーゾ監督はクラブ状況を理解したうえで契約書にサインし、文句ひとつ言わずにチームの構築に取り組んだ。そして、リーグ戦では常に上位を演じるチームを作った。限られた環境の中で、クラブの最大限の力を引き出す能力に長けた指揮官なのだ。

 研究好きな一面が、その原動力。一見、ユーモアのある言動から楽観的な人間に映るかもしれないが、鹿島から貸与される自宅は、常にJリーグのデータを集めた紙と映像資料でいっぱいになっていたという。その量は机の上、本棚に収まりきらないほどで、紙は床の上にも並べられていた。練習以外の時間のほとんどは、自宅にこもって研究を続ける。現役時代、スターと言われた監督は感性に頼りがちだが、セレーゾ監督はそうではない。

 さらに、セレーゾ監督は練習時間が長い。午前9時から始まった練習が、午後1時、2時まで続くこともしばしば。特に若手や試合出場機会が少ない選手にとっては、厳しい練習が待ち受けることになる。その善し悪しは別にして、チームの世代交代には若手の台頭が必要不可欠であり、今のクラブ状況を考えれば、適任者と言える。

 また、今年は新井場徹(セレッソ大阪)、増田誓志(蔚山現代/韓国)、興梠慎三(浦和レッズ)と主力クラス3人が流出したが、代わってダヴィ(ヴァンフォーレ甲府→)、野沢拓也(ヴィッセル神戸→)、前野貴徳(愛媛FC→)、中村充孝(京都サンガ→)ら、遜色ないメンバーが加入した。優勝を狙うライバルクラブと比較して、決して戦力が抜きん出ているとは言えないが、的確な補強に成功したと言える。

 リーグ優勝を逃した要因として、最も大きかったのは決定力不足だ。チャンスは作る、ボールも持てる、だが、勝ち切れない。この連鎖を断ち切る意味でも昨季のJ2得点王で、過去にJ1でも実績のあるダヴィの獲得は大きい。

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