【高校選手権】鵬翔、初V! 歴史に残る好ゲームを制した理由 (2ページ目)

  • 菊地芳樹(ストライカーDX編集部)●文 text by Kikuchi Yoshiki(STRIKER DX)
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

 その後、京都橘に再び加点された。後半19分、京都橘のFW小屋松知哉(2年)がワンツー突破でペナルティーエリア内に入り、左からクロス。すると、FW仙頭啓矢(3年)がまるでボールが来る場所がわかっていたかのように、ゴール前で相手の前にスッと入ってシュートを決めた。京都橘自慢の2トップのコンビネーションに、さすがの鵬翔守備陣も翻弄された。

 それでも、鵬翔の集中力は切れることがなかった。勢いがつくと手がつけられないほどの破壊力を見せる京都橘の2トップにも粘り強く対応。最前線から下りてきてチャンスを作る仙頭には、DFラインの前でアンカー(守備的MF)を務めるキャプテンの矢野大樹(3年)がしつこく追っかけた。スピードスターの小屋松に対しても、センターバックの原田駿哉(3年)や芳川が常に気を配って対処。人数をかけた守りで、小屋松が思い切り走れる回数を減らすことに成功した。

 結果、1点を取ったら2点、そして3点と、畳み掛けるような攻撃で勝ち上がってきた京都橘の猛攻を完全に封鎖。鵬翔にとっては、致命傷となる3点目を与えるチャンスを作らせなかったのが大きかった。これが、鵬翔が再度追いつくことに成功し、最終的に勝利を呼び込んだポイントになった。

 実は、鵬翔は「つなぎ」もうまかった。無理な放り込みは少なく、ショートパスや中距離のパスを駆使し、ビルドアップしながら攻めようとしていたのだ。そこから作れたチャンスは決して多かったとは言えないのだが、このつなぎが自分たちの守備回数、守る時間を少なくした。それによって、チームの堅守が維持された面がある。

「トーナメントを勝つには、守備をしっかりしないといけないと思った」という松﨑監督。そして京都橘の米澤一成監督も、「DF陣のがんばりがあって、ここまで来られた」と語った。2トップが目立った京都橘も、組織的な守りを維持し続けたディフェンスが光っていた。今回は改めて、トーナメントを勝ち上がるための守備の大切さが示された大会だったと言える。

 勝利した鵬翔は、センターバックの芳川がヘディングシュートを叩き込み、アンカーの矢野が2点目のPKを決めた。PK戦で勝負を決めた最後のキッカーはGKの浅田卓人(3年)だった。守備面の貢献者たちがスコアメイクでも活躍し、スポットライトを浴びる形になった。最高の舞台で、がんばった者の奮闘が報われた、素敵な戴冠だった。

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