【高校選手権】難敵・作陽を下した桐光学園。悲願達成へつかんだ自信 (2ページ目)

  • 粂田孝明(ストライカーDX編集部)●文 text by Kumeta Takaaki(STRIKER DX)
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

 試合終盤の手痛い失点。桐光学園の落胆は大きかったに違いない。だが、ピッチで戦う選手たちは、ショックを引きずることはなかった。素早く気持ちを切り替えて、誰もがゴールへの強い意欲を見せた。佐熊監督は言う。
「試合前から、どんな状況であってもギリギリまで諦めないで戦おうと話していた。だから、ラストプレイでもチャンスが来ると思っていた」

 そして、思わぬ展開を迎えた。後半アディショナルタイムに入って、作陽の野村雅之監督はPK要員としてGK末藤敬大(2年)を送り込んだのだ。
「PK戦になる前にGKを交代させることは、選手たちにも伝えていた」(野村監督)

 当初からの作戦とはいえ、そのタイミングが微妙だった。場面は、桐光学園のスローインから始まる。まして、桐光学園にはロングスローという武器がある。その絶好機を桐光学園は逃さなかった。

 はたして、一度は作陽DFがクリアしたボールは、「セットプレイのときは自分がこぼれ球を狙う形をずっとやってきた。最後はシュートで終わろうと決めていた」という桐光学園のエース野路貴之(3年)のところへ。瞬間、野路は右足を思い切り振り抜いた。ニアサイドに放たれた強烈なシュートは、代わったばかりのGKの体をすり抜けてゴールネットを揺らした。

 PK戦を意識して守りに入った作陽と、最後まで攻めの姿勢を貫いた桐光学園。この意識の差が、勝敗に微妙に影響したのかもしれない。

 ともあれ、難敵・作陽を下した桐光学園の夢は広がる。強みは、最後まで諦めずに戦うという、チームに浸透しているチャレンジャー精神だろう。佐熊監督が語る。
「周囲からは優勝候補と言われているけれども、私も選手たちもそんなことはまったく思っていない。常に『挑戦者』という気持ちを持ち続けている」

 選手たちのハードワークの源となっているのは、まさにこの精神。どんな試合でも、誰ひとりさぼることなく、選手全員が献身的にピッチを走り回っている。勝利をたぐり寄せた作陽戦も同様で、DF諸石は「最後の最後にうちの真骨頂が出た」と胸を張った。

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