【高円宮杯】ユース世代も頂点に立った広島。未来を見据えた「育成術」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 赤木真二●撮影 photo by Akagi Shinji

 ただしトップチームと異なり、ユースチームの場合は、単に優勝を称えても仕方がない。Jクラブのユースチームというのは、いわば「Jリーガー育成機関」。プロ選手を育てることが目的の場であり、身も蓋もない言い方をすれば、大会で優勝することに本来大きな意味はないのだ。

 つまり、ユースチームが問われるべきは、その時点で強いか弱いかよりも、将来的に優れた選手を送り出せるかどうか。広島ユースが称えられるべきは、チャンピオンシップ連覇よりも、むしろこの点にこそある。

 広島ユースはただ強いだけではない。多くの選手をトップチームへ送り出す、優れた選手育成機関でもあるのだ。

 実際、J1優勝を決めた11月24日のセレッソ大阪戦の先発メンバーを見ても、11人のうち4人(森脇良太、森﨑和幸、森﨑浩司、高萩洋次郎)が広島ユース育ち。今年も、チャンピオンシップで2ゴール1アシストの活躍を見せた、野津田岳人のトップチーム昇格が決まっている。

 また、柏木陽介、槙野智章(ともに浦和)、駒野友一(磐田)など、現在は他クラブで活躍する広島ユース出身者もいるのだから、育成機関としての貢献度は非常に高い。

 では、なぜ広島ユースは強いチームであると同時に、優れた選手育成機関ともなりえているのか。それを考えたとき、理由のひとつとしてまず挙げられるのが、サッカーに対する理解力の高さである。

 U-18をはじめとする育成年代では、技術の習得を優先した指導が是とされる。それ自体は間違っていないのだが、ともすると自らの技術におぼれ、パスをつなぐことが目的になってしまいがち。つまり、せっかくの技術がゴールを奪うために生かさていないことが少なくないのだ。

 広島ユースに敗れた東京Vユースの冨樫剛一監督は「(広島の)サッカーを構築していく力は見習わなくてはいけない」と称え、こう続ける。

「広島は、シンプルに人(周りの選手)を使って自分を生かすことができていた。サッカーはゴールに向かうスポーツ。そのプロセスがシンプルだった」

 狭いところに一度ボールを入れて、相手を食いつかせてから広いスペースへ展開する。そうした単純なことを当たり前にできるのが、広島の特徴。華麗なテクニックはなくとも、基本技術を忠実に発揮していけば、ゴールは奪えるということを、きちんと選手たちが理解しているのだ。

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