【Jリーグ】名波浩が語る、偉大なる「ゴン・中山」の思い出 (2ページ目)

  • photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

 中山さんとの思い出は、ジュビロでも、日本代表でも、あまりにもたくさんあり過ぎて、「これ」というのはパッと浮かばないけれども、印象深いのは、中山さんが負傷などでリハビリをしている姿。ジュビロでも、代表でも、あの中山さんの姿を見たら「自分もがんばらなきゃいけない」と思った。

 ジュビロでは、自分も同じ時期にリハビリしていることがあって、中山さんと一緒に練習時間より早く来て、いちばん最後にふたりでクラブハウスを後にしていた。言葉ではうまく言い表せないけど、そのときの中山さんの懸命かつ黙々とリハビリトレーニングをこなす姿を見ていたら、自分のケガなんかたいしたことないと思ったし、自分が悩んでいることなんか本当に小さく見えた。くよくよせずに「やってやろう!」という気持ちになった。あの姿は、一生忘れられない。

 そうしたリハビリする姿を含めて、中山さんは、サッカーをうまくなるためにはどうすればいいのか、勝つためにはどうすればいいのか、ということを行動で示してくれた。その背中を見て、自分だけでなく、多くの選手が影響を受けたと思う。

 また、単に馬鹿なことばかりやって周囲を明るくさせるのではなく、持ち前の"謙虚さ"で、人の気持ちを上に向かせてくれたし、チームの暗い雰囲気などを一掃してくれた。

 例えば、中山さんは点を取っても満足しない。1点取ったら2点、2点取ったら3点、3点取ったら4点目をいつも狙っていった。そういうひたむきなプレイで、周りの選手、そしてチームの意識を変えていった。そこからみんなの気持ちを、1勝したら2勝、2勝したら3勝、3勝したら4勝......、さらには1回優勝したら2回、2回優勝したら3回......という方向に導いてくれた。それはすべて、中山さんの"謙虚さ"から来るものだと思う。中山さんの存在というのは、それほど大きくて、偉大だった。

 何はともあれ、中山さんは頭のてっぺんからつま先まで手術した箇所がないのではないかと思うほど、満身創痍の状態。それだけハードに全力でサッカーをやってきた証拠で、まずはゆっくりと体を休めてほしい。

 引退の記者会見でも「リハビリして復帰する」などと話していたように、ずっとサッカーという"病魔"に侵され続けてきたであろう中山さん。これからもそのまま"病魔"に侵されて、サッカー界で存分に力を発揮してほしい。そして、中山さんにやる気があるのかどうかわからないけど、いつかお互い指導者として対戦したい気持ちが自分にはバリバリあるので、そういう機会が訪れればいいな、と思っている。

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