2012.11.14

【日本代表】
「ゼロトップ」はザックジャパンのオプションになりうるか?

  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 もちろん、周りが上がる時間を上手につくり、スペースをうまく使ってゴールを決めることができれば、ワントップでもゼロトップでもどちらでもいい。

 たとえば、イブラヒモビッチのような強烈な選手がターゲットとして前線にいるのであれば、そこを起点に全員が前向きでプレイできるから、ワントップで問題ない。ただ、日本の場合はセンターFWがケガや不調、あるいは出場停止で戦列を離れてしまうと、選手層を考えるとなかなか難しい部分もある。そうしたFWが不在のときに、前線でいかに起点をつくるかを考えると、本田をトップの位置に起用するやり方が選択肢として出てくると思う。

 当然、今の日本代表はワントップの「4-2-3-1」がベースにある。そのうえで、ひとつのオプションとして、このゼロトップという、スペイン代表に近いスタイルに可能性があるという判断をザッケローニ監督はしたのだと思う。

 ザッケローニ監督の本田のトップ起用は、岡田武史前監督が南アフリカW杯で採用したスタイルとはまったく違う。岡田監督の時は、本田が前線で孤立することが多く、どうにか彼の個の力でキープして、前線で起点をつくるというやり方だった。それに対してザッケローニ監督の本田の起用法は、前で起点を作るために多くの選手が流動的に連動して、ボールをチーム全員で保持して相手を押しこんでいくのが狙いだ。

 つまり、中盤を厚くするということであり、そのためにも選手同士の距離が短くなっているので、相手陣内まで全員でボールを持ち運びやすいし、本田が孤立することはない。ブラジル戦では、アタッキングサードにボールを運ぶために、本田が自由に動き、香川真司が前に出るなど、ポジションチェンジをたくさんしながら、ボールがつながっていた。

 課題は、攻撃の深さがつくれなくなっていたことだろう。トップの本田が引いてきてボールを回す代わりに、ほかの誰かが相手のDFラインの裏を狙って深さをつくれれば問題ないが、本田が下がることによって全員が下がってしまうと、どんどん相手に押し込まれてしまって自陣から抜け出せなくなる危険性が出てくる。自陣近くでボールを回すことが多くなると、そこでボールを奪われて失点するリスクが高くなる。

 あとは押しこんだときにフィニッシュまでどう持ち込むかという点でも課題が残った。押しこんだときは、ゴール前のスペースが狭くなるので、ほとんどが足元へのパスになる。足元へパスをいれて、はたいてまたゴール前に入って、また足元にパスをいれていく。攻撃がそうした形になると、本田がブラジル戦後に言っていたようにプレイの精度が高くないとうまくいかない。

 パスの距離が短くなって、しかもパススピードが上がるため、どうしてもミスしやすくなり、相手のプレッシャーを受けやすくなる。そのコンパクトな状況で相手を崩していかなくてはいけないから、パスとトラップ、そして動き出しのタイミングなど、あらゆるプレイを正確かつ迅速にできなくてはいけない。

 バルサやスペイン代表は、攻め込んだときに、基本的にスペースにはパスを出さない。スペースよりも、エリアに走り込む味方の足元にドンピシャで速いパスを出す。そして、受け手は速いパスをトラップしてすぐにさばく。このとき、走っている味方の足元に非常に速いスピードでパスを通す技術、そしてそれをおさめる技術がないと、狭いスペースで相手を崩していくことは難しい。