【Jリーグ】J残留を懸けて最終節へ。町田に奇跡は起こるか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 北村大樹/アフロスポーツ●写真

 乾坤一擲(けんこんいってき)の水戸戦で、町田は自分たちの理念に殉じている。

 3-5-2のシステム、リベロの田代真一は果敢なオーバーラップで攻撃を後押し、ワイドの選手は高い位置を保ち、10番のディミッチは根気よく中盤と前線をつないだ。必死に、丹念にボールをつないで攻撃を仕掛ける。まさに“攻撃こそ防御なり”の戦法だ。そして最前線を動き回った北井佑季こそ、「アルディレスと町田」の命運を握る選手と言える。

 北井は身長169cmと小兵ながら跳躍力と落下点の予測力に優れ、またDFの背後を取る動きに長け、スピードとテンポのあるドリブルでゴールに迫る。何よりゴールを狙う位置取りが良く、その異能は日本代表の岡崎慎司に近い。水戸戦もCKのこぼれを左足シュート、地面すれすれのヘディングシュート、ドリブルで駆け上がっての右足ミドルなど常にゴールを見据えていた。

 前半43分、北井はサイドからの折り返しをシュート、一度はGKに当ててしまうが、そのこぼれを押し込んでいる。

「(得点は)決めるだけでした。ただ、後半も点を取れる場面はあったと思います。自分が決めていれば……。前半を1-0で終えて2点目を狙いにいくというのはチームとしてありました。ただ、相手が前に出てきたとき、リードを守るという気持ちが出て、それがさらに相手にボールを支配させ、失点につながってしまった」

 北井はそう言って唇を噛んだ。攻撃し、得点することでしか、町田は勝てない。

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