【Jリーグ】J残留を懸けて最終節へ。町田に奇跡は起こるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 北村大樹/アフロスポーツ●写真

 町田は勝利が絶対条件で、状況が厳しいことは間違いない。ただ岐阜は得失点差で3点リードするものの、この差は一瞬でひっくり返る。例えばもし岐阜が2点差で敗れ、町田が2点差で勝てば逆転。さらに鳥取は得失点差で劣っているため、もし最終節で負け、町田が勝った場合は最下位に転落する。混戦状態で、すべては起こりうる。諦めずに戦い続ける者だけが、生き残るのだ。

「フットボールの勝負において、降参だけはしてはならない」

 力を込めて語ったアルディレス監督は、フットボールそのものの力を強く信じているように見えた。

 今シーズンから監督に就任したアルディレスは町田でボールプレイの確立を目指し、その采配を振るってきた。パスをつないでピッチを支配する、それは"サッカーの町"として広く知られる町田の矜持と重なる。J2は、選手全員がハードワークしてプレスをかけ、相手の攻撃はクリアで跳ね返してセカンドボールを拾う、というのが戦いの定石。つなぐよりも安全第一なメソッドが横行するリーグにおいて、その試みは実に挑戦的だった。

 ボールをつなげる。

 その行為には凄まじい勇気がいる。世界を席巻するFCバルセロナの選手たちは究極的な技術を武器に正確無比なパスワークを見せる。そんな彼らでも手ぐすねを引いてカウンターを狙うチームと相対したときは相当な覚悟でボールを回すという。町田の選手はバルサの選手のような技術を持たない。それでもボールプレイを追求するには、"たとえ敗れようとも"という開き直りと信念が求められた。

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