【フットサル】史上初の快挙をもたらしたカズ。ベスト8入りも夢じゃない (2ページ目)

  • 北 健一郎●文 text by Kita Kenichiro
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 出場時間は3試合で20分弱と他の選手よりも少なかった。ポルトガル戦ではビハインドを追い上げる展開の中、後半は1回もピッチに立てなかった。中2日での3連戦というサッカーにはない試合間隔の短さや、フットサルならではの2、3分ですぐに交代するペースにも戸惑った。それでも、カズが今回のグループリーグ突破に貢献したのは確かだ。

 ミゲル・ロドリゴ監督の言葉がそれを裏づける。
「結果的にグループリーグ突破という目標を達成できたことが、カズを呼んだことへの是非の回答になるのではないでしょうか。カズはチームに"エクストラ(特別なモノ)"を与えてくれたと思っています。彼の参入によってチーム全体のモチベーションが上がったのは間違いありません」

 カズ効果はそれだけではない。すべての試合会場には、日本から来たサポーターや現地在住の日本人が大挙して、"日本のホーム"といった雰囲気を作り出していた。これもまた、カズの存在なくしてはありえなかっただろう。

 キャプテンの木暮賢一郎が語る。
「たくさんのサポーターが来てくれたことは、当然、カズさんの存在があると思います。(親善試合が行なわれた)代々木、そして旭川でもそうだった。そうやってフットサルに対する見方が変わっていく中で、結果を出せばフットサルは盛り上がっていく。それも、カズさんがいて結果を出すことが、フットサル界の大きな前進につながると思います」

 カズという起爆剤を得て、日本はこの3試合で確かな成長ぶりを見せた。ブラジル戦では「大量点差をつけられない」という目標をチーム内で共有し、世界王者相手に3点差に抑えて次に望みをつなげた。ポルトガル戦では前半はミゲル監督が「就任してから最低の試合」と語るほどの内容だったが、後半にパワープレイで盛り返して5-5に追いついた。最もプレッシャーのかかったリビア戦は、後半に相手を畳みかけてしっかりと勝ち切った。

 そうしてW杯で厳しい戦いを乗り切り、経験していく中で、その時間を共有するカズとチームメイトとの間には、確固たる絆も生まれている。
「ミゲル監督やスタッフが言うのは、食事会場や移動のバスの中とかでのこと。例えば、その雰囲気作りとか、緊張している中で、『カズが笑顔になるだけでみんながホッとする』と言うんです。僕は無意識なんだけど、そう言ってくれるのはうれしいですよね」(カズ)

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