【Jリーグ】史上初のJからの降格争い。土壇場で戦う鳥取の選手たち (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 20位に沈んでいる鳥取は年間を通して根本的問題を抱えている。

 ロアッソ戦後、吉澤英生監督は「失点シーン以外はうまくいっていた」と強気に語ったが、手当たり次第に選手を走らせるだけ。竹槍で銃口を構えた敵に突入させるだけでは、勝てる望みは薄い。そもそもJFLでさえ解任の憂き目に遭っていた監督が、こうして負け続けていても指揮を執っているのはプロの世界では不思議な光景だ。システムは一貫せず、戦術も機能していない。

「最下位の町田ゼルビアは攻撃的なパス戦術を貫いてきただけに、(40節で)岐阜を相手に勝ちを拾い、正念場で地力が出せると思うと怖い」と、40歳のベテラン、"野人"岡野雅行(鳥取)も警戒を強める。12月には自らの愛称を冠したYAJINスタジアムのこけら落としが予定されている。最悪の事態は避けなければならない。

 また、コスタリカ代表のCB、ロイ・スミス(22)は「僕は自分が出た最後の試合で勝っているよ。なぜ試合にも出してもらえないの? 監督に聞いて欲しい。外国人選手だからかな。チームのために戦いたいのに」と肩をすぼめて語る。J2で最多の76失点、守備崩壊の状況。高い志ではるばる日本に来た彼が、歯がゆさを感じるのは当然だろう。

「でも、今は選手全員が腹を括るしかない。"このサッカーはこのサッカー"でやりきるしかないです」

 そう語ったのは、鶴見聡貴(25)だ。ガイナーレで6年目になる攻撃的MF。JFL時代からJリーグ昇格をかけて戦ってきた苦労人は続ける。

「監督から、"前からプレスをかけろ。とにかく守備だけやれ"と言われ、最初は反発も覚えましたよ。でも、それをしないとメンバー外だから、選手はやるしかない。反骨心だけでやってやろう、と死ぬ気で走りました。鬼プレスですよ! 自分としてはこの状況をポジティブに捉えるようにしています。"攻撃の選手"という誇りはあったけど、守備もできないことはない、と自信が持てた。まだ自分はサッカーをうまくなりたいですから」

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