【日本代表】「捨てパス」には理由がある。
ボランチ遠藤のゲームをコントロールする能力

 そのためにはかなりの回数と頻度で動き直しをしなくてはいけないので、1試合で相当な運動量になっているはずだ。試合の流れを読む「戦術眼」を求められるポジションであり、常に自分が広い視野を確保できるようなポジションをとって、ボールを受けなくてはいけない。

 守備的MFという言われ方もあるが、国ごとにいろいろな呼び名がある。ブラジルであれば「ボランチ」(ポルトガル語で舵)、スペインでは「ピボーテ」(スペイン語で軸)、イタリアに行くと「レジスタ」(イタリア語で演出家)、あとは「セントラルMF」と言われるイングランドなど、さまざまだ。

 求められることは少しずつ違う。それぞれ、システムや役割も少しずつ異なる。

 プレミアリーグでセントラルMFと言われる選手は、自陣のペナルティエリアから敵陣のペナルティエリアまでダイナミックに動き回り、守備も攻撃もできなくてはいけない。さらにゴールを決めることも求められる。リバプールのジェラードのように、屈強で、守備で相手の勢いを跳ね返せて、攻撃に転じることができる選手でなくては務まらない。

 ブラジルサッカーのボランチの場合、どちらかというと守備に重点が置かれており、敵の攻撃の芽を素早く摘んでいくことがまず優先される。パスをさばいて散らしていくというよりも、守備の危機察知能力と個のフィジカルが要求される。ジュビロ磐田でも活躍したドゥンガのような選手をイメージする人が多いのではないだろうか。

 スペインのピボーテの場合、スペイン代表やバルセロナの中盤をイメージしてもらうとわかりやすいだろう。バルセロナのシャビやブスケッツなどが軸の選手になる。攻撃の起点になることはもちろん、サイドバックやセンターバックが開いて持ち上がった時には、最終ライン付近まで下がることもあるので、攻守両面で色々なことができなくてはいけない。相手からプレッシャーを受けて、後ろ向きでボールを持ったときに取られない強さと技術、パスの精度も必要だ。

 また、スペインのようにビルドアップを重視するリーグのチームは、中盤の底の選手をセンターバックで起用することもある。たとえば、昨季のアスレティック・ビルバオで、ビエルサ監督は本来MFのハビ・マルチネスをセンターバックで使っていた。つまり、よりポゼッション率を高めてボールを回すためには、中盤の底が本職の選手がセンターバックをやるというところに行きつくのではないかと思う。これはバルセロナでマスチェラーノがセンターバックをやっていることからもわかってもらえるだろう。

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