【Jリーグ】レッズ、優勝に望みをつなぐ
奇跡の逆転劇はこうして生まれた

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 確かに、結末はあまりに劇的だった。しかし、最後に帳尻を合わせただけの勝利では、決してない。多くの選手が口をそろえて言っていたのは、「(大敗した)ガンバ戦の敗戦から学んだ」ということである。梅崎が語る。
「ガンバ戦では、最初に失点して守備のバランスを崩した。でも、今日はバランスを崩すことなく、コンパクトにやり続けられた」

 柏木もまた、「失点した後も集中してやれた。それが前半の同点ゴールにつながったんだと思う」と、前節との違いを口にした。

 ペトロヴィッチ監督は、そんな選手たちを称えて言う。
「ここまでの試合で負けることもあったが、我々は敗戦の後、さらに強くなって帰ってきた。後半は、相手よりもリスクを負って攻撃を仕掛けた。内容的にも勝利に値するゲームだった。最後のゴールはラッキーだった部分もあるが、リスクを負って攻めたらからこそ生まれたゴールだと思う」

 劇的な勝利で、俄然、意気上がる浦和。とはいえ、平川が「まだまだ広島とは離れている」と話すように、首位広島との勝ち点差は5のまま。あと7試合しか残されていないことを考えれば、決して小さな差ではない。

 首の皮一枚、は大袈裟だとしても、現実的に考えれば、劇的な勝利をもってしてもなお、浦和が苦しい立場にあることには何ら変わりがないのだ。

 だからこそ、選手たちに浮かれた様子はなく、置かれた立場もよく理解している。殊勲のポポが語る。
「これからのひとつひとつの試合を、すべて決勝戦のつもりで戦う。今回は、そのひとつに勝っただけ。残り7回の決勝戦で、どれだけ自分たちに勝利を持ってこられるかが勝負になる」

 浦和の灯をまだ消すわけにはいかない――。その執念が、ギリギリのところで彼らを優勝争いに踏みとどまらせた。

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