【Jリーグ】ザックの評価もさらに上昇? 好調磐田の右サイドに駒野あり (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Nikkan Sports/AFLO

 34分、広島が築く堅固な守備ブロックのなかへ、駒野は強引にドリブルで突っ込んでいくと、ペナルティエリア進入直前で足をかけられFKを獲得。これを自ら右足でゴール右スミに蹴り込んだ。

 いつもは控えめな駒野も、珍しく左拳を2度も突き上げ、ガッツポーズ。殊勲の背番号5が「狙い通り。カベの間だったけど、コースはいいところに行った」と振り返る、会心のFKだった。

 その後も、湿度77%という蒸し暑さのなかで多くの選手の足が止まり、佐藤も前田もゴールはおろか、シュートチャンスさえ得られないなか、駒野は果敢にドリブルを仕掛けた。後半なかば、ヤマハスタジアム全体に色濃く漂う停滞感を切り裂くように、駒野がドリブルで突き進むと、最後は相手DFに止められたにもかかわらず、スタンドからはこの日一番の大きな拍手が送られた。

 この試合で、磐田が得た4本のCKはすべて右サイド。もちろん、そのすべてが駒野の手柄とは言えないが、右サイドからの攻撃がいかに脅威となっていたかを物語る。試合は結局、両チームとも追加点を奪えないまま、1-1の引き分け。それでも、こう着した試合のなかで、常に前へ仕掛けていく駒野の積極的な姿勢は水際立っていた。

 それにしても、このところの駒野の好調ぶりは目覚ましいものがある。その活躍は磐田だけにとどまらない。

 8月15日に行われた日本代表のベネズエラ戦。次のワールドカップ最終予選(9月11日、対イラク)で、右サイドバックの内田篤人が出場停止になることを見据え、代役として酒井宏樹、酒井高徳といったロンドン世代に注目が集まるなか、実際に先発出場したのは駒野だった。
「オレを忘れるな!」
 経験豊富なサイドバックはそう言わんばかりの積極果敢な攻撃参加で、先制ゴールのアシストをはじめ、再三にわたってチャンスを作り出した。

 広島戦での貴重な同点ゴールも、前節の柏戦に続く、2試合連続でのFKからのゴール。元来、キックの精度には定評のある駒野だが、自身、「(FKなど)自分の持ち味をこれからもレベルアップさせていきたい。それが日本代表にもつながると思う」と話し、代表でのポジション獲得に意欲を見せる。

 奇しくも佐藤、前田と同学年の駒野は、今年7月に31回目の誕生日を迎えた。先ごろ発表された最新の日本代表23名にあって、上から3番目の年長者である。

 2年前、南アフリカで行われたW杯では、全4試合に先発フル出場。決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦ではPKを外し、一躍、"時の人"にもなった。だが、その後は内田の陰に隠れ、また、"ダブル酒井"をはじめとする新戦力の台頭という脅威にもさらされている。日本代表最年長サイドバックにとって、現在の形勢は決して有利なものではない。

 それでも、2年後のW杯ブラジル大会で、日本の右サイドバックを務めているのは案外この選手なのかもしれない。そんなことを思わせるだけの迫力が、今の駒野には確かにある。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る