【Jリーグ】浦和レッズは本当に生まれ変わったのか? (2ページ目)

  • 菊地正典●取材・文 text by Kikuchi Masanori
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 第19節の磐田戦でも、コンビネーションサッカーの成果は、顕著な形で表れていた。攻撃では、チームとしての狙いのひとつでもあり、日々のトレーニングでも意識的に取り組んでいた縦パスが、面白いようにつながっていく。くさびのボールが前線にしっかり収まり、攻撃の生命線である1トップ2シャドーが次々とそれに連動していた。

 先制点のシーンが、まさにそうだ。DFラインでボールをつないだ後、ボランチの阿部勇樹から縦パスが出ると、柏木がスルーをして原口元気がボールを受ける。そして原口は前を向いて勝負を仕掛け、マルシオ・リシャルデスがフリーランニングでスペースを空けると、そこへ走り込んだ柏木が原口のパスをダイレクトシュート。チームの狙い通りであり、「チームとして崩して点を取れた」(柏木)理想の形だった。

 一方、守備面でも、選手たちは常にコンビネーションを意識するようになったという。以前は「前線の選手は『前からボールを取りに行きたい』、だけど後ろの選手は『下がれ』という感じで、なかなか11人が同じ意識で守れていなかった」(槙野智章)こともあり、選手間が間延びしてバイタルエリアを狙われることも少なくなかった。しかし今季は、「全体が一旦引いてブロックを作ること」(永田充)を徹底し、同時にコンパクトにプレッシャーを仕掛けることで、「たとえひとりが抜かれても、すぐにカバーできる。チャレンジ&カバーがしっかりできている」(槙野)と、コンビネーションでの守備に自信を深めている。

 その攻守のベースを構築したペトロヴィッチ監督に対し、選手たちは今、全幅の信頼を寄せている。阿部が「楽しみながらトレーニングでトライしているので、それをゲームで出せていることで自信になって戦えている」と言えば、鈴木も「ペトロヴィッチ監督が僕達の表現しやすい環境を作ってくれている」と笑顔で答えた。また、今季途中から出場機会の増えた宇賀神友弥は「監督は精神的な部分も指摘してくれる。だから試合中、つらいときでも踏ん張れる忍耐力がついた」と、戦術面以外の指導にも傾倒している。

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