【Jリーグ】30歳になった佐藤寿人の得点王独走にはワケがある (2ページ目)

  • 原田大輔●文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 昨季は、その「最低限の目標」を達成するのに32試合を費やした。ところが、30歳を迎えた今シーズンは、わずか13試合でそれをクリアしてしまった。第18節を終えて広島が首位を走っているというチーム状況もあるだろうが、そこには明確な理由がある。

「今シーズンは本当にコンディションがいい。以前、森保(一)監督が福田(正博)さんに言われたことがあるようで、30歳を過ぎてからも長くプレイするにはコンディションを考えてプレイすることだって。それが今、自分も身に染みてわかるんですよね。選手だから90分間フルに出場したいけど、長いシーズンを見れば、時には我慢することも必要だなって」

 自らも35歳まで現役を続けた森保一監督が、佐藤のコンディション維持に細心の注意を払ってくれているという。

「昨シーズンまではほとんど交代せずに90分間試合に出ることが多かった。でも、今シーズンは森保さんと相談して、点差がついた試合などでは途中交代するようにしている」

 ここまでの18試合で、半分の9試合で佐藤は途中交代している。昨季は33試合に出場して途中交代は11試合だった。休むのはわずか10分、15分かもしれないが、そのわずかな時間が大きい。それが結果的に第18節を終えて得点ランキングでトップとなる14得点という数字につながっている。

「FWとしては勝っている状況で試合に出ていれば、もう1点取れるかもしれないという欲もある。でも、そういうやりたい気持ちをコントロールして、コンディションを優先している。そのおかげで試合のときだけでなく、いい状態で練習にも臨めているんですよね」

 佐藤へのアドバイスをもたらした福田正博氏は、彼のプレイをこう分析する。
「とにかくDFラインとの駆け引きがうまい。特にクロスに対してDFの前に入っていくタイミング。一度、DFの視界から消えて出てくるタイミング。オフサイドラインから横に走り、縦に抜けていくタイミング。そういうプレイに関しては、非常に高い技術がある。あとは、ゴール前での冷静さも持ち合わせている。それは、おそらく最初から持っていたものではなく、実績を積むことで身につけていった能力だと思いますね」

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