【Jリーグ】セレッソ・柿谷曜一朗、「天才」は本当に復活したのか? (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Sugimoto Akihiro/AFLO SPORT

 ボールを持ったとき、誰よりも期待感あふれる歓声を受けていたのは、柿谷だ。単に、セレッソの下部組織出身でサポーターに愛されているから、というだけでは説明がつかない空気が、そこには確かにあった。

 そんな長居スタジアムの雰囲気を知ってか知らずか、柿谷は淡々と試合を振り返る。

「負けていたのだから、前に(仕掛けて)行くのは当然こと。そこで諦めるような選手はピッチに立つ資格がないと思うし、立ったからには(ドリブルが)止められようと、最後までしっかり戦うのが当たり前だと思う」

 結局、セレッソは0-1で敗れ、「そこで決定的な仕事ができれば良かったけど......」と、柿谷は悔しさをにじませた。試合開始早々に放ったシュートがゴールポストを叩いたり、後半開始早々には際どいボレーシュートを放ったりしたが、最終的に負けてしまっては、柿谷の自己評価が厳しくなるのも無理はなかった。

 それは、この試合に限ったことではない。冒頭に記した最近7試合で、セレッソが勝利したのはわずかに2試合。そのうちの1試合は5-0の楽勝であり、柿谷はほぼ勝負が決した後の3、4点目を決めていたに過ぎない。

 つまりは、本当の意味で「柿谷のゴールがチームを勝たせた」と言える試合は、ナビスコカップでの1試合しかないのだ。

 その他に貴重な同点ゴールこそあるものの、結果的に勝利には結びついていない。柿谷の中で、「チームに勝利をもたらす仕事はまだできていない」という気持ちがあったとしても不思議はない。

 だからだろうか、最近の好調ぶりについて尋ねても、柿谷の反応はそっけないものだった。

「(好調の要因については)特に何も感じていない。チームとしてやらなければいけないことを、僕が今やっているだけで、それは誰がやっても一緒。チーム全員が(誰が出ても)それができればいいことなので」

 16歳にしてセレッソとプロ契約を結んだ天才少年も、J2徳島への期限付き移籍を経て、フォア・ザ・チームの気持ちが強くなったのは確かだろう。

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