【名波浩の視点】好調・広島、リーグトップの得点力を生み出す「仕掛け」 (3ページ目)

 もうひとつ、攻撃面で忘れてはならないのは、トップ下の左に入っている高萩洋次郎の働き。昨季は李がシュートを放っていたであろうエリアのところで、今季はその位置から寿人が動き出して絶好のスペースを空けているのだが、そこに高萩がスッと入ってきてラストパスを出すシーンが非常に多い。高萩自身は今季2得点しか記録していないものの、アシスト数はリーグトップの9。そうした高萩の特徴を生かせる今の形ができているのも、広島が点を取れている要因のひとつだと思う。

 こうして見れば、広島が優勝するチャンスは十分にある。ただ、柏レイソルや名古屋グランパスなど、力のあるチームが勝ち星を重ねてくると、プレッシャーもかかってくるだろうし、頂点に立つのはそう簡単なことではない。

 そこで大切になるのは、今のうちにできるだけ勝ち点を積み上げていくこともひとつだろうが、磐田戦のように失点ゼロの試合を増やしていくことが、第一のポイント。何より守備面で自信を持つことがチームの成長につながるわけで、相手を失点ゼロで抑えることが、チームがワンランク上がるための糧になっていくと思う。

 もうひとつのポイントは、大人サッカーをすること。この試合でも残り5分で1-0と勝っている状態で、攻め上がっていく選手が多かった。最終的には2点目が取れたからいいけれども、できれば、高い位置でボールを回すとか、サイドでキープするとか、そういう選択肢も持っていたほうがいい。優勝を争うようになればなるほど、そうした大人の時間の使い方、というものが大事になってくるのではないだろうか。

 あとは、寿人がどれだけ点に絡めるかどうか。やはり彼の活躍が、広島というチームの浮沈のカギを握っていると思う。

プロフィール

  • 名波 浩

    名波 浩 (ななみ・ひろし)

    1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍

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