【日本代表】遠藤以上の選手はいない!?
ザックジャパンのボランチに求められる能力

  • photo by Fujita Masato

 多くの試合のデータを見れば分かるが、ボランチは相当な回数ボールを触るポジションでもある。運動量も必要だ。長い距離を全力でスプリントするのではなく、細かく何回も動き直してボールを受けて、また動き直してボールを受けることでいいリズムを作っていく。いわゆる「舵取り役」であり、ゲームをコントロールしていく役割を担っているポジションだ。今の日本代表では、長谷部誠と遠藤保仁がボランチを務めており、このふたりのバランスが非常にいい。

 ここでしっかりとボールを受けられて展開できる選手がいないチームは、中盤の中央のエリアを有効に使えなくなり、失点も増える。これがサイドであればボールを奪われてもゴールまで距離があるのでいいが、中央で奪われると、一気にゴール前まで侵入されてしまう。

 そうした失点に直結するリスクがあるのに、なぜボランチを経由して攻撃を組み立てるのか? それはもちろん、攻撃面でのリターンが大きいからだ。

 よく『攻撃のスイッチを入れる』と言われるが、それはほとんどの場合、ボランチから前線にパスを入れるということ。そのスイッチを入れるためには、試合の流れを全体的に俯瞰して見られる能力がないといけない。

 大きく展開を変えていくことも含めた「リズム」を作っていく意味で遠藤はその能力に長けている。短いパスを繋ぎながら、相手にとって一番危険なところをいつも狙って、行ける時は行く。反面、無理にチャレンジしてリズムを崩してしまう選手も多く、その辺りの判断とバランスが難しいポジションでもある。だからこそ、そのバランスをとることが非常にうまい遠藤は貴重な存在といえる。

 Jリーグでもガンバと対戦するチームは、おそらく遠藤をおさえることを最初に考えると思うが、それは日本代表と対戦するチームでも同じだろう。日本が1-0で負けたW杯3次予選のウズベキスタン戦でも、遠藤には厳しいマークがついた。この試合では、遠藤をおさえられた結果、日本代表は思うような攻撃のリズムができなかった。

 では、遠藤をおさえられたときに、どうすべきか。まずひとつの考え方として、トップ下が引いてきて、遠藤が上がっていくという縦のポジションチェンジが有効ではある。ポジションを変えるということは、相手にとって守りづらく嫌なもの。ただし、トップ下が引いてくると相手のラインが上がってコンパクトな状況を作られてしまうので、縦のポジションチェンジをするのであれば、最終ラインの選手がひとつ前に出て、ボールを持ち出していくやり方がベターだろう。

 そのためには、CBにオシムさんが言うポリバレントな能力がないといけない。正確なパスとロングフィード、ドリブルで持ち出す能力がなければいけない。

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